第3講1節 いろいろな数列の和(1)

佐藤の数学教科書「数列」編の勉強

 

【問1】

(1×2)+(2×3)+(3×4)+・・・+n(n+1)=(1/3)n(n+1)(n+2)を証明せよ。

 

【問2】

(1×2×3)+(2×3×4)+(3×4×5)+・・・+n(n+1)(n+2)=(1/4)n(n+1)(n+2)(n+3)を証明せよ。

 

【問3】

(1×2×3×4)+(2×3×4×5)+(3×4×5×6)+・・・+n(n+1)(n+2)(n+3)=(1/5)n(n+1)(n+2)(n+3)(n+4)を証明せよ。

 

(解答)

【問1】

=k(k+1)の和(k=1~n)を求める問題です。

こういう和の問題を求める場合は、

=b-b(k+1)

とあらわせるbの式を考えて解きます。

 

+a+a+a

=(b-b)+(b-b)+(b-b)+(b-b

=b-b

となり、問題が簡単に解けるようになるからです。

 

-(k-1)k(k+1)+k(k+1)(k+2)

を考える。

 

-(k-1)k(k+1)+k(k+1)(k+2)

=k(k+1){-(k-1)+(k+2)}

=k(k+1){3}

となるから、

k(k+1)=(1/3){-(k-1)k(k+1)+k(k+1)(k+2)}

である。

 

つまり、

=k(k+1)の場合において、

=b-b(k+1)

とあらわせる

=-(k-1)k(k+1)

という式が得られた。

 

これを使って、以下の答えが得られる。

=k(k+1)の和(k=1~n)は、

(1/3){b-b(n+1)

=(1/3){-0×1×2+n(n+1)(n+2)}

=(1/3)n(n+1)(n+2)

(証明おわり)

 

問2以降も同様に証明できる。

 

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空間ベクトルの3つの公式

空間ベクトルの3つの公式

以下の3つの公式は、各自で証明してください。

 

【問1】
点Oから線分AB(点Oと点AとBとの各点の位置は異なる)の中の点P(線分ABの端点AとBも含む)まで引いたベクトルOPが以下の条件を満足する式であらわせる事を証明せよ。

【問1(その2)】

 ただし、ベクトルOAとベクトルOBが平行で同じ直線上にある場合は、これらの各ベクトルは、他のベクトルに係数を掛けてあらわす事ができる。そのため、ベクトルOPは、上の条件を満足する式以外にも、(上の条件を満足しない)式でもあらわす事ができる。

 

【問2】
 点Oから三角形ABC(点Oと点AとBとCとの各点の位置は異なる)の中の点P(三角形ABCの辺上の点も含む)まで引いたベクトルOPが以下の条件を満足する式であらわせる事を証明せよ。

【問2(その2)】

 ただし、ベクトルOAとOBとOCが同一平面上にある場合は、これらの3つの各ベクトルは、他の2つのベクトルを合成してあらわす事ができる。そのため、ベクトルOPは、上の条件を満足する式以外にも、(上の条件を満足しない)式でもあらわすことができる。 

 

 【問3】
 点Oから四面体ABCD(点Oと点AとBとCとDとの各点の位置は異なる)の中の点P(四面体ABCDを囲む面上の点も含む)まで引いたベクトルOPが以下の条件を満足する式であらわせる事を証明せよ。

【問3(その2)】

 ただし、ベクトルOAとOBとOCとODが同じ三次元空間上にあるので、これら4つの各ベクトルが、他の3つのベクトルの合成であらわす事ができる。そのため、ベクトルOPは、上の条件を満足する式以外にも、(上の条件を満足しない)式でもあらわす事ができる。

 

 もし、ベクトルOAとOBとOCとODが4次元空間上のベクトルであって、各ベクトルが他の3つのベクトルの合成ではあらわす事ができない様に独立しているときは、

ベクトルOPは上の条件を満足する、ただ1つの式だけであらわされる。


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逆関数や合成関数の概念

 

(ページ内リンク先)
▽はじめに
▽関数の定義
▽(外部リンク)連続関数の正しい定義 
 ▽微分積分を使いものにする言葉 
 ▽「区間」という用語の意味 
▽(外部リンク)原始関数とは何か
▽逆関数 
▽合成関数 
▽逆関数定理 
▽陰関数 
▽値域に虚数を含む関数g(x)の逆関数 

(はじめに)
高校1年に2次関数を学びましたが、
高校2年になると、3次関数や4次関数や分数関数を学び、
三角関数も学びました。

そして、指数関数や対数関数も学びます。

高校2年では、このように多くの関数を学びますが、
以下の関数の概念も覚えましょう。

大学生向けの参考書「微分積分学入門」(著者:横田 壽)の18ページ近くに、関数の定義が書いてあります。

(大学1年生向けの参考書の「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 も、間違いが無く、高校2年生が初めて関数及び微分積分を勉強するのにも、適切な参考書だと思います)

《1.1 関数の定義(definition of function)》
 2 つの集合の間の関係を決める規則を関数といいます.ここでは,実数の集合を考えます.
Rを実数全体の集合とします.
ある実数の集合D に属する各数x に対して,実数y が1 つ定まるような規則f を、
D からR への1 価関数(single-valued function),または、1変数(の1価)関数(←「やさしく学べる微分積分」2ページ)、または単に関数といいます.

微分積分学入門」(著者:横田 壽)(又は、「やさしく学べる微分積分」(石村園子))は、とても明瞭(かつ、正確)に数学の関数・極限・微分積分を説明してくれていますので、
高校2年生でも、関数や微分積分がよくわかるようになると思います。

《関数値が複素数の関数もある》
 関数の定義によると、実数の変数xに対して、複素数のyの値の関数値f(x)を与える関係f(x)も関数です。 

 関数f(x)=xというように、数xを使った演算式によって値を求める演算が関数であるというように感じていた人も多いと思います。その様に変数xの式によって定義されている関数は、xが複素数であっても、その演算結果が定義され、その演算が可能なあらゆる数をxとして使って良いです。そのxの値に対してf(x)という式の演算の結果の値を関数値y=f(x)として対応付ける関数です。

 上で定義した関数の定義では、変数xの演算が明確な式で表せ無くても、変数xに対してf(x)の値を対応付ける関係さえ定めてあれば、それも関数であると定義しています。そのようにして、関数の概念を広く定義しています。
 そのように関数の概念を広くした結果、変数xに対応する関数値を定義する変数xの集合の範囲(変数xを想定する範囲)を明確化する(変数xの「定義域」を指定する)必要が生まれました。

 それにより、有理数の変数xに対してのみ、実数のyの値の関数値g(x)を与える関係g(x)も関数であると定義できます。その関数の変数xの定義域は「有理数」であって、その変数xの定義域には無理数は含まれていません。

 また、変数xを実数に限り、変数xが実数以外の複素数の場合については考えない関数も定義できます。(そういう関数の方が、普通に考えられている関数のイメージに近いと思います。)

《変数zの定義域が複素数の関数もある》
変数z=x+iy,
という複素数zに対して、複素数
F(z)=f(x,y)+ig(x,y),
という複素数F(z)を対応させる関数もあります。
この関数F(z)は、実数の2変数関数f(x,y)とg(x,y)を使って表されますが、
f(x,y)とg(x,y)の式の組み合わせによっては、以下の例のように、zという1つの文字で表された演算式 h(z) の形では関数値を表せない(h(z)≠f(x,y)+ig(x,y))複素数変数の関数もあります。


《定義域が異なる関数は、異なる関数》
 また、関数は変数xの定義域の各変数値に対して関数値f(x)を対応付けさせる関係の事ですので、f(x)をxで演算する演算が同じであっても、定義域が異なれば異なる関数である事になり、関数が変数xの定義域の数だけ複数の関数が作れる事になります。


【連続関数の正しい定義】
 特に、微分積分の命綱を握っているのが連続関数の概念です。
その連続関数の高校数学での定義が間違っているので注意が必要です。

【原始関数とは何か】
後に積分を学ぶ際に、原始関数を学びますが、その関数の定義があいまいで不正確なので要注意です。

《(1)逆関数
逆関数という関数の概念があります。

微分積分学入門」(著者:横田 壽)の21ページ近くに、逆関数の定義があります。

逆関数(inverse functions)
関数f の定義域D(f) 内の任意の2 数x1, x2 に対して,
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2)
が成り立つとき, f は1 対1 の関数(one-to-one function) であるといいます.
(f は(写像として)単射である (injective) とも言います。)


ここで、
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2) とは,
x1 とx2 が異なるならば, f(x1) とf(x2) は異なることを意味しています.
この場合,値域R(f) の各数y に対して, y = f(x) であるようなx を1 つ定めるような規則が考えられます(なぜでしょうか).
これをf の逆関数(inverse function)とよび,
f には逆関数が存在するといいます.


y=f(x)
という関数があれば、
関数の値が減少から増加に転ずる点がある場合は、
その点で関数を2つに分割する必要があります。
そうしないと、
その点の前後で複数のxに同じyが対応することになってしまうからです。
複数のxに同じyが対応してしまうと、その関数には、以下で説明する逆関数が作れなくなってしまうので都合が悪いからです。

そのようにて、1対1対応の関数として定義した関数には「逆関数」が存在します。
x=f -1(y)
という逆関数があります。

逆関数は、変数xとyの立場を入れ替えることで作れます。
その逆関数の形を以下の式3のグラフで描くことができます。
式3が逆関数の形をあらわしています。上図のように、逆関数のグラフは、直線y=xに関して、元の関数f(x)のグラフに対して対称なグラフになります。

「ある関数 f に対して逆関数-1 が存在する」という表現はくせものです。
なぜなら、ある関数 y=f(x) のグラフがあれば、そのグラフのxとyを入れ替えたグラフを考えて、その入れ替えたグラフから、以下のようにして、逆関数-1 のグラフを考え出すことができるからです。
(1)逆関数-1 のグラフが1つの変数に対して2つの値を持つ場合には、グラフを分割して、分割された逆関数-1 のグラフでは、1つの変数に対して1つの値しか持たないようにする。そして、その元の関数 y=f(x) のグラフもそれに対応して分割する。
(2) そうすれば、分割された元の関数 y=f(x) が、分割された逆関数-1 のグラフに対応する逆関数-1 を持つ。
(3)そうすれば、どの関数も逆関数を持つことにできるのではないか?
という疑問が生まれるうさんくささがあるからです。

しかし、以下の事例のように、グラフを分割する操作では対応し切れず、本当に逆関数が存在し得ない場合もあります。

下の図のグラフのように、xの値が少し変わっても t の値が同じ値になる関数の部分では、
複数のxに1つの t が対応します。

その関数の部分には逆関数が存在出来ません。
無理に逆関数のグラフを作ろうとすると、そのグラフは下の図のように、垂直に立つグラフになってしまい、1つの変数 t に対して複数の値が与えられることになってしまうからです。
1つの変数に1つの値を対応させる関数のグラフにすると下の図のように、形が変わってしまいます。
この場合には、絶対に逆関数が存在し得ないグラフの部分(関数の一部分)がありました。

 関数f(x)が1つながりに連続な関数であって、単調増加な関数である場合には、その逆関数が存在します。
【関数f(x)が単調増加とは】
 x1<x2なならば、f(x1)<f(x2)となる関数f(x)を単調増加な関数と呼ぶ。
------単調増加の定義おわり-------------

 一方で、以下のグラフの不連続関数f(x)であっても逆関数を持ちます。
 以下のグラフの不連続な点を持つ関数f(x)も1つの一体の関数として逆関数を持ちます。
 次に、以下のグラフA(E)BCDで表す不連続な点を持つ関数f(x)は、所定の点で2つの関数に分割することで、分割されたそれぞれの関数が逆関数を持つようにできます。
f(x)の定義域を限定することで関数が逆関数を持つようにする場合。その定義域を限定した関数にする、元の関数f(x)を分割する点は、点Eで関数f(x)を分割しても良いし点Cで関数f(x)を分割しても良いです。

《(2)合成関数》
 合成関数という関数の概念があります。

微分積分学入門」(著者:横田 壽)の21ページ近くに、合成関数の定義が書いてあります。 

合成関数(composite functions)
 関数どうしのつなぎ方として,
合成法則(composition) とよばれる方法について考えます.
まず, f(x) とg(x)2 つの関数を用意します.
次に任意のx に対して規則g を用いて1 つの実数g(x) を取り出します.
もしこのg(x) が関数f(x) の定義域に入っていれば,
規則f を用いて1 つの実数f(g(x)) を取り出すことができるでしょう.
ところで,この実数f(g(x)) は何なのでしょうか.
もしg(x) の値域がf(x) の定義域に含まれていれば,
g(x) の定義域内の各数x に対して, f(g(x)) を作ることができます.
これはg(x) の定義域内の各数x に対し,ただ1 つの実数f(g(x)) を定める規則と考えられます.
よってこの規則をf とg の合成関数(composite function) といい,
f ◦ g で表わすと(f ◦ g)(x) = f(g(x)) となります.


以下に合成関数の例をあげます。
 上の式はxの関数hを合成関数の形で表現しました。
関数hは、gというパラメータ関数を使って、式1と式2とであらわした、結局は式3の形のxの関数です。
hは、式1の形と式3の形との2つの形の式であらわすことができます。
 この関数hは、以下の形の合成関数の形であらわすこともできます。
 式3の形の関数hは、sというパラメータ関数を使って、式4と式5であらわすことができます。
hは、式4の形でもあらわせます。
パラメータ関数を自由に選ぶことで式3のxの関数hは、式1や式4の形やその他の形の無限に多くの形であらわすことができます。

逆関数定理】
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2)
が成り立ち, f が1 対1 の関数(one-to-one function) であるとき、以下の図の1対1の写像の関係があります。

1対1の写像をする関数 f には逆関数が定義できます。
そこで、関数 f で1対1の写像をした後で、逆関数で定義される1対1の写像をする、合成関数の写像をすれば、以下の図の様に元に戻ります。
また、逆写像の変数yの定義域の変数yに対して写像で1対1の写像をした後で、関数 f で定義される1対1の写像をする、合成関数の写像をすれば、以下の図の様に元に戻ります。
これは、逆関数定理と呼ばれています。

(陰関数の定義)
微分積分学入門」(著者:横田 壽)の192ページに、陰関数の定義が書いてあります。

6.8 陰関数(implicit functions)
 方程式3x+2y +1 = 0 から,

x の関数としてのy、
つまりy = −(1 + 3x)/2 を考えることができます.
 

 一般に2 変数関数 f(x, y) に対して,1 変数関数 y = g(x) が常に f(x, g(x)) = 0 を満たすとき,
y = g(x) を、

方程式 f(x, y) = 0 から定まる陰関数(implicit function) といいます.

方程式 f(x, y) = 0 から定まる陰関数 y = g(x) を求めることは, f(x, y) = 0 をy について解くことと同じです.

また、高校生向けサイトでも:「陰関数定理」の章で:
「F(x,y)=0とする。実数のある開区間で定義された連続関数 y=φ(x)であって、 F(x,φ(x))=0を満足するφ(x)が存在する場合に、
φ(x)を、方程式F(x,y)=0が定める陰関数と呼ぶ」
と説明しています。


(円の方程式の陰関数の例)
円の方程式は、
f(x, y) ≡+yー1=0 (1)
ですが、
この方程式から求める、
f(x, g(x)) = 0 を満たす1 変数関数 y = g(x) が、
この円の方程式から定まる陰関数です。露わな形の関数g(x)を使ってy=g(x)という式であらわせた場合のg(x)は「陽関数」とも言います。y=g(x)が有りそうだがその関数g(x)の式の形が分からない段階では、その分からない式を「陰関数」と呼び、g(x)の式が露わに分かったら、その式g(x)を「陽関数」と呼ぶのが良いと考えます。

円の方程式自体は、方程式なのであって、それ自体は陰関数とは呼ばないのです。「陰関数表現である」と言います。

虚数を値域に持つ関数g(x)》
1 変数関数 y = g(x) の値域に、

虚数のyの値を持つ、以下の図の様な、(円の方程式(1)において、xの二乗>1の場合の虚数の値のg(x)を値域に持つ)関数が作れます。
 
この式2aと式2bで定めた1変数関数
y=g(x)
は、常に f(x, g(x)) = 0 を満たすので、円の方程式(1)から定まる陰関数です。ただし、ここでは、g(x)の式の形が露わに分かったので、もう、このg(x)を陽関数と呼んだ方が良いとも思います。
 この関数g(x)の変数xの定義域は、マイナス無限大からプラス無限大までの全ての実数であり、
値域は0から1までと、k≧0で範囲が指定された虚数 ik です。

《値域に虚数を含む関数g(x)の逆関数
 上記の関数g(x)は、以上の定義域で定義された関数ですが、xの異なる値に対して同じyの値が対応するので、この関数g(x)の逆関数は無い。しかし、関数g(x)の変数xの定義域をx≧0に限定すれば、以下の逆関数があります。

元の関数の定義域を限定する g(x), (x≧0)

この逆関数の定義域はg(x)の値域であり、逆関数の定義域の実数は0から1までしか無く、それ以外の定義域は純虚数です。そして、逆関数の値域はg(x)の定義域であり、0以上の実数です


なお、円の方程式(1)を満たす陰関数の式は、上の式だけでは無く、以下の式2c、2dも円の方程式(1)を満たします。
これらの式2cと2dを使って、円の方程式(1)を満たす他の陰関数も作れます。
 また、式2aと式2cを一緒に使った関数を作って、変数xの1つの値に対して関数値g(x)が2つある2価関数(円全体を表す式)を作ることもできます。 
 また、関数値を虚数だけにした、式2bと式2cを一緒に使った関数を作って、変数xの1つの値に対して関数値g(x)が2つある虚数の関数値を持つ双曲線の形をした2価関数を作ることもできます。

(補足)
 方程式3x+2y +1 = 0 から,
変数変換して、
変数t≡3x+2y の関数としてのy、
すなわち、t=-1を考えることができます。
この方程式は、特定のtの値に関するyの値が無限に多くあることをあらわす直線の式です。

この直線の式は、ty-座標平面において、傾きが無限大の直線をあらわしています。
この直線の式をあらわす関数は、もはや、tの1価関数ではありません。
なぜなら、t=-1に対する、yの値が2個以上あるからです。

このように、1価関数であるか否かということは、観察する座標系をどう定めるかによって変わる関係なのです。
また、関数とは、座標系を変える事によって変わる、座標系の「変数」を与える座標軸の座標値と、「関数値」を与える座標軸の座標値との関係なのです。

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微分積分はどうすれば勉強できるか(2)

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/08/blog-post_17.html

微分積分」の勉強

 高校2年生から、極限・微分積分の「意味がわからない」「つまらない」「教わる計算方法が正しいと言える理由(証明)がわからない」で数学の学習から脱落する高校2年生が多いらしい。

 その脱落の原因を考えます。

 脱落する原因は、微分積分には歴史的に説明のあいまいさがある事、そして、日本の高校の微分積分の教育では、そのあいまいさを更にあいまいにして、異なる事を同じことだと言って説明を単純化したり、証明が難しい事は証明しないで、それが証明されたと感覚的に感じるようごまかして教え、その説明のおかしさに生徒が気付かないよう生徒の数学感覚を麻痺させるよう誘導している事が、脱落の原因だと思います。また、そのように数学感覚が麻痺したまま大学に入ると、大学で学ぶ正しい微分積分が全く理解できなくなります。

 ごまかしのある説明をするように指示された先生は、説明にごまかしがある事を知っています。そして、その説明を論理的に詳しく説明すると、ごまかしが白日の下にさらされるので、説明の論理性を追求する事を嫌います。そのため、ごまかしを教える先生は、生徒に徹底した説明ができず、説明する事自体を避ける事になります。

 生徒に微分積分を完全に理解できる必須な公式を全部教えると、それも、ごまかしを白日の下にさらす種になるので、必須公式を全部教える事も避けられていると考えます。

 

 公式を生徒に覚えさせるときに、間違ってはいるが覚えやすい事を生徒に覚えさせる事が、微分積分を生徒にやさしく覚えられるようにした親切な教育である、といった誤解があるから、教わる高校生が混乱することが原因で生徒が脱落するのではないかと考えます。

 ごまかしがある説明は、どう説明しても、論理的には筋が通りません。論理的には理解され得ない事ですので、数学センスのある学生には受け入れられず、それ以上一歩も前に進めなくなると思われます。

 

 数学の公式を覚える数学センスから考えると、嘘とごまかしは、数学を覚えにくくするので禁物なのです。なぜかと言うと、数学の公式を覚えるというのは公式を導き出す小さなヒントだけ覚えて、そのヒントから公式全体を導き出せるようにすることだからです。

 小さなヒントだけ覚えれば良いので多くの公式を覚える量が本当に少なくて済み、覚えるのが楽になります。

 しかし、嘘とごまかしによっては、そこから正しい公式全体を導き出せ無くなります。そのような不純物(嘘、ごまかし)が心に入ると、もう数学の力は失われてしまい、何もわからなくなります。そのため、数学センスのある学生には、嘘とごまかしは受け入れられないのです。

 

 数学センスのある学生が学習を一歩も前に進めることができなくなることが無い、安心して微分積分の勉強を進めることができる、ごまかしの無い本は、高校生用の教科書や参考書なのでは無く、大学1年生向けの参考書:例えば:「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 などだと思います。その本は、微分積分を初めて学ぶ高校2年生にとって、内容がわかり易くて、しかも正確であって良いと思います。その本の36ページから45ページまで勉強するだけで、微分の必須知識が学べます。

 

 なお、その本から学んだ本物の微分積分の知識は、高校の微分積分の教義から見れば異端の知識です。そのため、それを知っていることを隠してください。

 ガリレオ・ガリレイが「太陽が地球の周りを回っているのでは無く、地球の方が動いている」と言ったときにどのような目にあったかの歴史を学んでください。

 くれぐれも、授業中に、先生や生徒が間違った微分積分の計算をしたときに、その誤りを指摘したりしないように、慎重に、周りの空気を読んで行動してください。ただし、その誤りは、大学入学試験には通用しませんが、、、

 

 当ブログでは、数学センスのある学生にも微分積分がわかるように、ごまかしの無い微分積分の解説をするようにします。 

 

微分積分を使いものにする言葉について)

 数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、微分積分を使いものになる道具にするため、数学の定理で連続関数を使うときに必ず使う形に整合させて連続関数を定義しています。すなわち、連続関数という言葉を、連結区間で1つながりに連続する関数と定義しています。

 また、使いものにならなくなっている「不連続点」と言われている言葉を使わず、微分積分の概念の理解のために役立つ言葉で、連続点以外の点をあらわす「連続で無い点」という言葉を使っています。そのため、当ブログでも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」に従って、「不連続点」という言葉は使わず、「連続で無い点」という言葉を使います。

(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)

 

 高校2年の微分積分の勉強のためには、「やさしく学べる微分積分」(石村園子)を読んで、高校3年になって本格的に微分積分を学びたくなった学生は、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている本:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」を読むと、微分積分が無駄なく勉強できて良いと思います。
 なお、それらの本から学んだ本物の微分積分の知識は、高校の微分積分の教義から見れば異端の知識です。そのため、それを知っていることを高校では隠してください。大学入学試験の答案に書くのはもちろん良いですが、、、 

 

 高校では、定積分を以下のように教えています。

【関数f(x)の定積分を以下のように定義する】

(1)微分したらf(x)になる関数F(x)を見つけること。

この関数F(x)を原始関数と呼ぶ。

この原始関数を使って、以下の計算で定積分する。

 

【問題点】

 数学センスを持つ人が知っている以下の常識があります。

『 「何かAが存在するならば、それで何かBができる」という定理であって、

その存在する「何かA」の集合がどういうものであるかが示せない、

言い換えると、その定理がいつ使えて、いつ使えないかを示せない、

という定理には、定理としての価値が無い』と言う常識です。

 なぜなら、その定理(命題)を等価な命題である「対偶」に言い換えると、

『何かBができないならば、何かAが存在しない。何かBができた場合は、何かAが存在するかしないかは分からない』

となります。この命題は、何かBができるための前提条件を教えてはいません。そのため、この命題は「何かB」の本質を教える情報は含んでいないし、また、「何かA」の本質を教える情報も含んでいません。定理の要素がおぼろげながら見えてきた段階で、その要素の関係をしっかり調べた定理にはせずに、とりあえず「定理」にした未完成な形の定理になっています。

 この様な表現の他の例として、例えば以下の「定理」:

「関数f(x)にxを掛け算した関数をF(x)とする。このとき、F(x)の微分がf(x)となる関数F(x)が存在するならば、その関数F(x)がf(x)の積分である」

という「定理」には価値が無い。

f(x)=1の場合

F(x)=xとなり、たしかにこの「定理」が成り立っている。

f(x)=xの場合、

F(x)=xとなり、

F’(x)=2x≠f(x)なので、この定理が規定する存在条件を満足する関数F(x)が無い。

よって、この場合も、この定理には矛盾がない。

 

 しかし、この論理には大きな欠陥があります。

「言っていることが成り立つ場合に、その定理が使える」

という条件を加えた定理は、いつだって成り立ちます。なぜならば、成り立たない場合は、その定理の適用範囲外だと規定しているからです。

 この「定理」は、いつ使えるかを明確化した定理に書き換えることができ、その書き換えた定理は:

「関数f(x)にxを掛け算した関数をF(x)とする。関数f(x)が定数である場合に限り、その関数F(x)がf(x)の積分である」

というように、内容を明確化して書き換えることができます。

 このように、いつ使えるかを明確化してみると、元の「定理」は、いつ使えて、いつ使えないかを定義せずあいまいにしている「ごまかし」があっただけとわかります。定理は、このように明確化しなければなりません。

 そのため、いつ使えて、いつ使えないかを定義していない定理は、

解くべき問題(いつ使えて、いつ使えないかという問題)を解かずに、

問題をあいまいにしている「ごまかし」があるので、

定理としての価値がありません。

 

【関数f(x)の定積分を以下のように定義する】では、原始関数F(x)が存在すれば、という適用除外条件があり、しかも、その適用が除外されない、存在するF(x)とはいかなるものかということが定義されていないので、無価値な定義です。

 

【不正確な情報から真実を見抜くコツ】

 以下で説明するように、高校で教わる原始関数の定義は(大学での定義とは異なり)不正確なあいまいな定義です。

 そのように、不正確な情報から真実を拾い出すコツがあります。それは、扱う関数を均質な基本的な要素に分割して、その分割された関数に不正確かもしれない情報を適用します。

 具体的には、関数を、全て、1つながりに連続する関数に分割して考えます。その、1つながりに連続する関数を扱うのであれば、不正確な情報の公式を適用したとしても誤りに陥る事を防ぐことができます。

 

 そのように、先ずは、1つながりに連続する関数毎に積分を調べれば良いのです。

例えば、下図の関数f(x)を考える場合:

x<-1での1つながりに連続する関数と、

-1<x<1での1つながりに連続する関数と、

1<x での1つながりに連続する関数を、

別々の3つの関数と考えれば良いのです。

 

 そのように、関数全体を、均質な基本的な要素の関数に分割して、その基本要素だけに公式を適用すれば、不正確な壊れた道具の定理(例えば正しい原始関数の定義を使って証明した定理を作ってから、原始関数の定義を変えてしまって、その定理を適用するという使い方の定理)を使いこなすことができるようになります。

 不正確な情報が与えられても正しい答えを出せるようになる事は、数学の極意を習得するという事でもあり、大事な数学的分析態度だと考えます。

 

【原始関数とは何か】

 先ず、原始関数の正しい定義が何であるかという事から話を始めなければなりません。

 

【原始関数の誤解される定義】

関数F(x)の定義域がわからない定義:

 ある関数F(x)を微分すると、

F’(x)=f(x)

になるとき、関数F(x)を関数f(x)の原始関数と呼ぶ。

(原始関数の定義おわり)

 

【原始関数の正しい定義】

 上の定義は、誤解されるあいまいな不正確な定義であり、原始関数F(x)の定義域がどの領域かが示されていない(定義域が決まらなければ関数が定義されない)、明確さを欠いているので、まともな定義とは言い難いものです。

 正確な当初の原始関数の定義は:

関数F(x)が、連結区間a<x<bのどの点でも連続、かつ、微分可能な関数であれば、F(x)を微分して導関数f(x)が求められる。この場合に、F(x)を関数f(x)の原始関数と言う、

と定義されていました。

藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」

 

定義4.25.

閉区間[a, b] で定義された関数f が与えられたとき,

(a≦x≦bとなる全ての実数のxに対して有限の値のf(x)が定義されている。)

f を導関数に持つ関数F が存在すれば,

(F(x)が、a≦x≦bの全領域でF’(x)=f(x)であるとは、全領域で微分可能ということであり、それゆえ、F(x)はa≦x≦bで連続な関数。)

F をf の原始関数と呼ぶ. 

(名古屋大学教授 内藤久資の講義ノート(4))

 この定義も、原始関数F(x)は、定義域の連結区間内のどの点でも連続、かつ、微分可能な関数であって、それを微分した導関数がf(x)になる関数、と定義している。

 すなわち、原始関数はその定義域の連結区間における連続関数であり1つながりのグラフであると定義されています。

 

《区間という用語の意味》

 また、「区間」という数学用語は、実数の集合として定義されている用語である事に注意が必要です。

a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。

-∞<x<∞という区間もあります。

区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。

 区間a≦x≦bが命題の中に記載されている場合は、その範囲内の全ての実数xについて命題を検討する必要があります。被積分関数f(x)が定義されていない変数xの点があっても、その点も、その命題が検討されるべき点の1つです。

 

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の164ページでも:

「ある(連結)区間Iで定義された関数f(x)が与えられたとき、f(x)を導関数とする関数、すなわち、F’(x)=f(x)なる(連結区間)Iで定義された関数F(x)をf(x)の原始関数という。」

と定義されています。

 すなわち、原始関数は連結区間で連続な関数であり1つながりのグラフであると定義されています。

 

高校生に積分を正しく教えるサイトでの原始関数の定義:

「 f(x) を実数上の連結区間で定義された関数とする.このとき,同じ連結区間上の関数で, F′(x)=f(x) を満たす関数 F(x) を f(x) の原始関数と言う。」

 このサイトの定義でも、原始関数は連結区間における連続関数であり1つながりのグラフであると定義されています。

 

推薦できる高校数学の参考書:「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄)でも、原始関数を、

「ある(連結)区間で定義された(被積分)関数f(x)に対し、F’(x)=f(x)となる関数F(x)があるとき、F(x)をf(x)の原始関数という。」

と定義しています

 この参考書の定義でも、原始関数は連結区間における連続関数であり1つながりのグラフであると定義されています。

 

(注意)

 F(x)が微分可能でF'(x)=f(x)であっても、f(x)が連続関数になるとは限らないことに注意。F(x)が連続であっても微小に振動している場合があるからです。そのため、連続関数で無いf(x)に原始関数F(x)がある場合もある。

 

(原始関数の例)

下図の関数f(x)の原始関数F(x)を考える。

上図の関数f(x)の原始関数F(x)は、下図の様に3つある。

1つながりのグラフが1つの原始関数です。その他のグラフは別の原始関数です。上図の様に3つの別々の原始関数があります。

 

(あいまいな原始関数の定義の問題点)

 ある関数F(x)を微分すると、F’(x)=f(x)

になる、というだけの定義なら、その定義を厳密に適用すると、

関数F(x)の定義域が分断されていても、その分断された各定義域において、

F’(x)=f(x)

となる関数(補足1の誤解された原始関数)の全部の分断された定義域をまとめて定義域にした関数も原始関数になってしまいます。

 

 高校生は、原始関数の誤った定義に従った以下の補足1の誤解された原始関数を、真の原始関数に係る公式に適用することで、間違った答えを出す矛盾に直面します。

 

(補足1)

F(x)=1/xをxで微分したらf(x)=-1/xになるので、関数f(x)の原始関数がF(x)=1/xです。

なお、F(x)=1/xは、x=0では関数F(x)が定義されず、関数が定義されているどの点で微分しても、結果が全てf(x)=-1/xになるので、間違いなく、F(x)はf(x)の原始関数であると誤解します。

(不連続な、誤解された原始関数の特徴)
 ただし、不連続な誤解された原始関数の場合は、異常な原始関数になり、例えば、
x>0で、F(x)=1/x+3,
x<0で、F(x)=1/x+100,
という、

先の原始関数の連続で無い点で分離された領域毎に異なる定数を加えて作った原始関数であっても、
f(x)=F’(x)=-1/x
になります。

つまり、同じf(x)の誤解された原始関数群が、1つの誤解された原始関数F(x)+Cという形だけでは表しきれません。

 

 このことを、もっと単純化して考えてみます。下のグラフのように、点x=0で不連続な誤解された原始関数F(x)を考えると理解し易いと考えます。

この誤解された原始関数F(x)が、x≠0において、

dF(X)/dx=f(x)=0

となります。

被積分関数f(x)が、

x=0ではf(x)の値が定義されず、

f(x)=0 (x>0)

f(x)=0 (x<0)

という関数である場合において、

f(x)に対する誤解された原始関数F(x)は:

F(x)=C1, (x>0)

F(x)=C2, (x<0)

という、2つの定数C1とC2を使った解が得られる事を考えると理解し易くなると考えます。

 

この2つの異なる積分定数毎に関数を異ならせる事ができるので、異なる積分定数が設定できる部分毎に異なる関数があり、それらを一緒にして1つの関数としてはいけないと考えられます。

 

この1つになった原始関数は、定義域がx<0とx>0であって、その定義域の中に連続で無い点を含みましたが、積分を行う際に必要な、真の原始関数F(x)は、変数xの連結区間の中に関数F(x)が連続で無い点を含まない原始関数です。

 

 誤解された原始関数F(x)は、

連続で無い点で分離される、異なる積分定数が設定できる領域毎に、独立に、

F(x)+C

というように、1つの積分定数だけで置き換えられて、微分すると同じf(x)が得られる部分を、f(x)の1つの正しい原始関数であると解釈できます。

この積分定数Cは、

誤解された原始関数F(x)のうち、連続で無い点で分離された正しい原始関数毎に1つの積分定数を使う事ができるのです。

(真の原始関数は、誤解された原始関数F(x)の連続で無い点で分離された領域の1つを定義域とする関数です。) 

 

 誤った定義に従った補足1の誤解された原始関数と、原始関数の性質として教えられる公式とが違っている矛盾を見せられた高校生が微分積分の理解に苦しむのは当たり前の事と思います。

 なぜなら、原始関数の定義が誤っているので、正しい原始関数の概念を使ったあらゆる公式が無意味な公式になります。そして、それらの無意味になった公式を使ったあらゆる公式が無意味になるからです。

 このような嘘を押し付けられ覚える事を強制され、微分積分がわからないようにされている高校生に心から同情します。

 

(補足2)

 また、関数はその定義域とセットにして定義され、定義域が異なれば異なる関数であると区別されるものなので、

先ずは、定義域を広くした”原始関数F(x)”を考えて、その定義域を関数f(x)の定義域にまで狭くした関数F(x)をf(x)の真の原始関数F(x)と考えると良い。

そうする方が原始関数の発見方法としてわかりやすく実用的と考えます。

 

不定積分とは何か】

 定積分の計算については、

連結区間a≦x≦bの全ての点で関数f(x)が連続であれば、

以下の不定積分F(x)を使った計算でその区間の定積分が計算できる。

連結区間a≦x≦bの全ての点で関数f(x)が連続の場合は、不定積分F(x)が求められて上式で定積分が計算できるが、

連結区間a≦x≦bに中に関数f(x)が連続で無い点がある場合に、不定積分と思ったF(x)を上の式に使って定積分を計算すると答えが間違う。

という定理(微分積分学の基本定理)があるだけです。

(微分積分学の基本定理の詳細)

 関数y=f(x)が、 連結区間a≦x≦b の全ての点で連続とする。 その条件が成り立つならば、必ず、

という計算をすることができる。
そして、次のことが成り立つ。
(1)S(x)はf(x)の不定積分(=実用的原始関数)である。

(S(x)は、必ず1つながりの連続関数になる。)

このS(x)の式はf(x)の不定積分の定義になっています。

不定積分S(x)は、連結区間a<x<bのどの点でも、

S'(x)=f(x)

になるので原始関数でもあります。

 

(注意)

 以下の関数f(x)は関数の定義域内の全ての点で連続ですが、1つながりに連続な関数では無いので連続関数ではありません。

この切れ切れのノコギリ状の関数f(x)を積分した関数F(x)を求めてみます。

この関数F(x)を微分すると、x=0.5, 1.5, 2.5等では、F(x)の微分係数が計算できません。

この関数F(x)は原始関数ではありません。

それは、f(x)が1つながりに連続では無いので連続関数では無いからです。


 高校生は教科書から、誤った連続関数の定義:

「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である。」

を教わることで、
正しい定理:「連続関数を積分した式はすべて微分可能である」が、

その誤った連続関数の定義から導かれるこの反例によって否定されてしまうという問題に直面します。

こういう問題に直面する高校生に心から同情します。

(注意おわり)

 

 この不定積分S(x)(=原始関数)は、

大学以上になると、

積分の閉区間の端部x=a,bでも、

片側微分係数だけがあれば、微分可能であるとして、

端点での微分係数が定義されています。

(2)F(x)を、

a≦x≦b 上で連続な関数f(x)の任意の不定積分(=実用的原始関数)とすると、

が成立する。

この式では不定積分F(x)を使って計算するが、被積分関数f(x)がa≦x≦bで連続な関数である場合は、この式に原始関数を使っても良い。
(定理の定義おわり)


 すなわち、この微分積分学の基本定理によって、

関数f(x)がa≦x≦b上で連続であるならば、

不定積分S(x)やF(x)が、f(x)のその範囲内の積分で計算する事で求められる事が保証されています。

 そうして計算して得た不定積分F(x)、(定義域で連続な原始関数)、を使って、

関数f(x)が連続である範囲のa≦x≦bでの定積分を、

F(b)-F(a)で計算できる事が保証されています。 

 

-----(注意)---------

積分の特徴)

 積分は、関数f(x)のグラフの面積を求める計算です。グラフの多くの部分の総和の面積を求めるものです。そのため、グラフの微小な一部分の過不足があっても総体の面積に対する影響はわずかです。例えば、グラフの1点の値f(0)が何であっても(ただしf(0)が無限大で無ければ)、総体の面積に対する影響は0であると言えます。

 そのため、積分では、グラフの微小部分には注目しないで計算をします。

 

 そのため、被積分関数f(x)の不定積分F(x)が、以下のような物であっても、問題にしません。

例えば以下の式の様に、

x=0で不連続な関数f(x)について:

(例えば、f(0)=0,x>0でf(x)=1)

大学以上になると、閉区間の端点x=0において、不定積分F(x)の右微分係数F’+(0)が存在すれば、それをその端点x=0の微分係数であると定義しています。

 

上の例の不連続関数f(x)の不定積分F(x)の場合は、

F’+(0)=f(0+)(=右側のf(x)の極限)=1

でF(x)の端点x=0での微分係数の値が1になります。

しかし、その微分係数は、元の関数f(0)=0にはなりません。

そのため、得られた不定積分F(x)は被積分関数f(x)の原始関数ではありません。

 

積分の本質)

 しかし、このことが問題だと考えるのは、積分の本質から外れた発想です。

積分の目的は、不定積分を求める事であって、原始関数を求める事では無いのです。

 

本当の数学では、使えそうに思った原始関数を試しに微分してf(x)の一部分と比較して、一部分が一致すれば、

その一致した範囲を定義域にした原始関数を不定積分F(x)の一部分の定義域に使って、不定積分F(x)の全体の定義域の関数を求める助けにしているだけなのです。

しかし、高校数学では、そういう手段で使っているだけの脇役の原始関数をことさら強調して、原始関数を主役にしてしまっている本末転倒な事を教えています。しかも、その原始関数の定義も不正確で結果的に嘘が教えられています。

推薦できる高校数学の参考書:「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄)では、積分を、不定積分を主役にして説明しています。

 

積分の特徴は、

不定積分F(x)の微分によってf(x)の1点であるf(0)が再現できないという不定積分であっても、その不定積分F(x)を使って被積分関数f(x)の定積分を計算するには支障がありません。
そういう不定積分の関数F(x)をf(x)に対して求めるだけで充分なのです。
 

そういう、微分して変数x=0という

1点のf(0)が得られないが、その他の大部分のxでf(x)が微分によって得られる元になる不定積分F(x)を求めれば、それで良いのです。

 

上図のグラフのf(x)の積分をしようとして、原始関数が得られないから答えが出ないというのは、あまりにお粗末な解き方と思います。

上図のf(x)の原始関数が得られなかったのでは無く、f(x)の定積分に使える不定積分F(x)の解が得られたのです。

 

不定積分F(x)は、いわば実用的原始関数と呼んで良いと考えます。


なお、原始関数F(x)の定義は、連結区間を定義域にする関数であって、F’(x)=f(x)となり、
その連結区間の全てのxにおいてf(x)が存在する関数です。
しかし、実用的な原始関数と言える不定積分F(x)は、不定積分の定義域の大部分のxで、その式が成り立つだけで良く、端点では式が成り立っていなくても良いのです。そのため、F(x)の微分によってf(0)が求められ無くても実害がありません。


 求めるべきなのは不定積分F(x)(=実用的原始関数)です。そのF(x)の定義域の大部分のxでF(x)の微分がf(x)になれば良く、積分への影響が0である数点のxの値でF’(x)がf(x)と一致しない事は無視します。

 

不定積分の例)

以下の図の関数f(x)のグラフを考えます。

この関数f(x)の、

-1≦x≦3

の閉区間を小区間に細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、リーマン積分可能です

この関数f(x)をリーマン積分して、以下の図の不定積分の関数F(x)を求めることができます。

この関数F(x)は、x=0とx=2で微分不可能ですので、原始関数ではあらわせず、原始関数では、上図の様な簡単なグラフの面積を求める事もできません。

 

しかし、不定積分の部分に原始関数を組み込んで不定積分を作るために原始関数を使うことができます。

上の関数の例では、定義域が0<x<2の範囲のf(x)に対して、定義域が0<x<2である原始関数F(x)が存在します。それを不定積分に組み込みます。また、定義域が2<xの範囲のf(x)に対して、定義域が2<xである原始関数F(x)が存在します。また、定義域がx<0の範囲のf(x)に対して、定義域がx<0である原始関数F(x)が存在します。その3つの原始関数を組み込んで不定積分を作れば良いのです。

 

【閉区間の端点での微分の注意】

 なお、大学以上では、以下の様な拡張された微分の定義が使われます。

区間で連続な関数F(x)を閉区間の端点でも微分可能とする拡張された微分の定義が、大阪大学の教授が書いた「微分積分学」(難波誠)の、44ページに記載されています。

区間の端点で関数F(x)が片側微分可能であれば、その片側微分を端点での微分係数と定義しています」

 

そして、区間で連続な関数F(x)を端点以外で微分してf(x)を再現できるという確認ができた関数F(x)が、閉区間の端では、この定義の片側微分によりf(0)も再現できた場合に、F(x)がf(x)原始関数であるという説明がされています。

 

 この微分の定義「端点で関数F(x)の微分を片側微分係数で定義する」は大学生以上で使われています。

------注意おわり-------------

 

(関数が連続で無い範囲で定積分が計算できない例の図)

上図の関数を、上図の様にx=0を含む区間で定積分したら、マイナスの無限大になるので、積分が不可能です。例えば、上図の関数をー1から1までの区間積分する事も(関数f(x)が不連続になるx=0を含む区間で定積分する事になるので)不可能です。

このように積分できない範囲があります。

 

これを無視して、関数f(x)の連続で無い点を定積分の範囲内に入れてしまうと以下の間違いをおかします。

F(x)=1/xをxで微分したらf(x)=-1/xになるので、関数f(x)=-1/xの原始関数がF(x)=1/xである。

しかし、積分区間を、f(x)が不連続になる変数値x=0を含めた、xが-1から1までの区間にして、定義域を広げる事でF(x)を誤解された原始関数にしてしまって、

関数f(x)を定積分しようとして、

その区間で不連続な誤解された原始関数を使って、

F(1)-F(-1)=1-(-1)=2

という 計算をすると、明らかに間違えます。

上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分の結果は(積分がグラフの面積を表すので)、マイナス無限大にならなければなりません。

しかし、上の計算はそれと全く違う、間違った答えになったのが明らかです。

 (誤解された原始関数の差で計算するから間違えるのであって、不定積分(定義域内で必ず1つながりに連続な関数になる)の差で定積分を計算するならば、この様な間違いは起きません)

 

なお、

という計算で得た関数S(x)は不定積分であって、1つながりのグラフになります。

実際、a>0の場合には、x>0の範囲の定義域だけの関数

S(x)=1/x, (x>0)

だけが得られます。

a≦b<0の場合には、x<0の範囲の定義域だけの関数

S(x)=1/x, (x<0)

だけが得られます。

a=0の場合には、s(x)が計算できません。

このように積分の式で定義される(定義可能な)不定積分

は必ず連続関数になります。

不定積分の関数は端点x=a,x=bを持つ連結区間で1つながりに連続する関数です

この不定積分S(x)は、x≠0における誤解された原始関数:

F(x)=1/x, (x≠0)

(これは、定義域がx≠0で、x<0の部分とx>0の部分を両方とも定義域に持つ不連続な誤解された原始関数F(x) である)

とは異なります。

 

《もう1つの関数の例》

(誤解された原始関数の計算)

 上の関数の例では、点x=0で不連続な関数F(x)が、x≠0において、

dF(X)/dx=0

となるとき、

F(x)=C1, (x<0)

F(x)=C2, (x>0)

という、2つの定数C1とC2を使ってあらわされ、そのF(x)の微分がf(x)になるので、このC1とC2で定義された関数F(x)も、f(x)の誤解された原始関数です。

 

不定積分の計算)

 一方、関数f(x)を不定積分すると、

a>0の場合には、x>0の範囲の定義域だけの関数

S(x)=0, (x>0)

だけが得られます。この定義域でs(x)=0は連続関数です。

a≦b<0の場合には、x<0の範囲の定義域だけの関数

S(x)=0, (x<0)

だけが得られます。この定義域でS(x)=0は連続関数です。

a=0の場合には、S(x)が計算できません。

この積分の式で定義される(定義可能な)不定積分

は必ず連続な関数です。

しかも、この不定積分には、定数C1もC2もあらわれません。

そのため、この不定積分は、原始関数F(x)とは異なります。

 

微分積分学の基本定理によって、

原始関数F(x)を使って被積分関数f(x)の定積分が計算できる事が完全に保証されているのは、f(x)が、その積分区間で連続なときだけです。

それ以外の場合には、その計算の答えが間違っていることがある、という事を認識しなければなりません。

(なお、微分積分学の基本定理積分可能性を完全に保証する条件であるf(x)が積分区間で連続でなければならないという条件は、緩める事ができ、f(x)の原始関数F(x)が積分区間で連続であるだけで良いということが分かっています。これは、後で詳しく説明します。

 

(誤解された原始関数の差で計算するから間違えるのであって、不定積分(必ず連続関数になる)の差で定積分を計算するならば、この様な間違いは起きません。不定積分(いつも連続関数)の差で定積分を求めたと書く答案が一番正しい答案だと思います。) 

 

 微分積分学の基本定理の登場により我々に注意が喚起されたメッセージは、

『関数f(x)の積分を計算しようとする場合には、その積分区間における関数の性質(連続である等)を調べなければならない』

というメッセージです。

原始関数を用いて定積分を計算する演算の際に、その定積分積分区間における関数の性質を調べる事を欠かしてはならない、というメッセージです。

 

 この大切なメッセージは、日本の高校の積分の授業では、教えられていません。 

そして、高校で習う、

「原始関数F(x)を使って、以下の計算で定積分する。」

に従って計算すると、

不連続な誤解された原始関数を使った計算では、先の例の様に間違った答えになります。

上の図のマイナス無限大の面積が、

以下で説明するように、全く違う間違った答えになります。


F(x)=1/xをxで微分したら上図の被積分関数f(x)=-1/xになるので、

関数f(x)=-1/xの誤解された原始関数がF(x)=1/xです。

 

そして、誤解された原始関数F(x)を使って:

の式を使って、

f(x)が不連続になるx=0を含めた、xが-1から1までの区間の定積分を計算すると、

F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
と 計算されます。

この答えは、明らかに間違いです。

 

(誤解された原始関数の差で計算するから間違えるのであって、不定積分(必ず連続関数になる)の差で定積分を計算するならば、この様な間違いは起きません)

 

微分積分を学ぶとき注意すべき点】

 また、微分を理解するためには、以下の事も整理して学ぶ必要があると考えます。

変数xで表される2つの関数があって、

変数xのある値xにおける、2つの関数のxによる微分係数が、以下の式であらわされて等しい場合に:

この関数を他の変数tで微分した場合に、

が成り立つと普通は考えますが、それが成り立たない場合もあります。

それが成り立つ場合と成り立たない場合を区別する条件は、「合成関数の微分の公式」を学ぶことで理解されますが、それが高校生には教えられていません。

 変数xを変数t≡(x-1)に置き換えて、その変数で微分してみるといった変数変換は頻繁に行われます。その変数変換の中にはやってはいけない変数変換があると言われたら一歩も計算を進めることができなくなります。

 その「やって良い変数変換」とは何なのかが分かるようになるまでしっかり勉強して下さい。

高校教科書ではそれは教えていません。

微分積分の勉強は、高校教科書からでは無く、自分で良い微分積分の参考書(大学1年生向けの参考書が良い)を探して、勉強するようにしてください。

 例えば、「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 が、内容がわかり易くて良いと思います。

その36ページから45ページまで勉強すれば、「合成関数の微分の公式」まで勉強でき、「やって良い変数変換」が何なのかが分かるまでの勉強ができると思います。

 

[室蘭工業大学 山口 格] “論証"・論証"とやかましくいっておきながら,微積のところへ来ると,とたんにいいかげんな議論でごまかしている。一ーまた高校ではごまかさざるを得ないだろう。高校数学の目的は生徒のあたまを混乱させることにあるのだろうか。


 現在の高等学校の教科書は,積分の概念の説明を回避している。

 

 1997年からは、日本の高校の数学IIで面積が無定義に用いられという、数学センスを否定する蛮行が行なわれた。そして、関数f(x)のグラフとx軸で囲まれる領域の面積を,x方向で微分するともとの関数f(x)になり、面積の微分がf(x)となるという本末転倒なことを教えるようになった。

 

 このような、数学センスに反する無価値な情報をおぼえることを強制された場合、それを覚えることを拒否して良いと考えます。

 一つの選択としては、理系に進むのを止めて文系に進むことがあります。

 しかし、数学が好きな学生には、それはできない、と考えます。

その学生のために、以下の様に微分積分を学ぶことを推薦します。

 

微分積分の学び方)

 ヨーロッパやアメリカでは、「高校で微分積分を教えるのは、直感にうったえる内容に限られ、正確な微分積分を教えられない」という理由で、微分積分は大学生に教える科目になっています。

 日本の大学でも、その欧米の教育に合わせて、初めて学ぶ者に分かるように微分積分を改めて教育しているようです。

 大学で使う微分積分の参考書は、高校で教える微分積分の知識を全く知らない学生に理解できるように書かれています。

 しかも、大学生向けの微分積分の参考書の方が、日本の高校生向けの微分積分の参考書よりやさしく分かり易い。

 

 高校の微分積分を勉強するなら、先ず、大学生向けの微分積分の参考書を読むことを推薦します。高校の微分積分の教科書は分かりにくいだけで無く、間違いも含まれています。読まない方が良いのではないかと考えます。

 微分については、大学生向けの参考書の

微分積分学入門」(横田 壽)

を読んでみることをお勧めします。

(注:横田教授が芝浦工業大学を退官したため、この教科書を無料で掲載していたWebページが無くなりました。この本は書店で購入できます。

 

(しかし、同じ著者の書いた高校生向けの参考書「確実に身につく微分積分(2012年)」の1版は、内容が劣化しているのでお勧めできません。大学生向けの本物の知識の参考書「微分積分学入門(2004年)」を読んでください。)

 

その他に、高校2年生が勉強するのに適切な、書店で購入できる微分積分の参考書は:

「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円

が内容がわかり易くて良いと思います。

 

微分積分学入門」(横田 壽)の読み方は、 66ページから始まる2章「微分法」の以前のページは斜め読みして、何が書いてあるらしいかを漠然と把握しておいて、

66ページ以降の2章「微分法」をお勧めします。

読んでいるうちに知らない関数や概念が出てきたら、66ページ以前に書いてありますので、探して、その部分を読んで理解するように勉強してください。

 

 積分については,ここをクリックした先のpdfファイルにある原教授の以下のコメントが大切です。

---(原教授のコメント開始)---------
 積分については高校でも習ってはいるが,その基礎を突き詰めていくといろいろと困ったことがでてくる.
特に 「積分微分の逆演算」として定義すると,「ある関数 f の積分を求めよ」という問題や「この関数の積分は定義でき るか?」という問題でハタと困ってしまう.
微分して f になるような関数がわからない場合,高校までの知識ではお手上げだ.)
この節では高校までの知識はいったん忘れて,「積分とは何か」「積分をどのように定義すべきか」か ら話を始める.

4.1 積分(定積分)の定義
 ということで,まずやるべきは「与えられた関数f(x) に対して,その積分を定義すること」である.
これから見ていくように,かなり広いクラスの関数に対してその積分(定積分)を定義することができる.
積分を通して不定積分も定義できるので,高校までの知識とのつながりがつくことになる.
・・・
積分の最も素朴な定義はこれから紹介する「リーマン和」に基づくもので、、、
---(原教授のコメントおわり)------

 

微分積分学入門」(横田 壽)は、積分の説明もわかり易いのでお勧めですが、先ずは124ページのリーマン積分を読んでから、次に、その前のページに書かれている積分の説明を読んで欲しい。

積分の計算の基本)

 以下のグラフのように、面積を分割して、分割した要素の総計を求めてグラフの面積を計算する手法が「定積分」です。

 この計算のための法則性を整理して覚えることが「積分」を勉強するということです。

 

(「リーマン積分可能」の定義)
微分積分学入門」(横田 壽)の124ページから125ページに「リーマン積分可能」の定義が書いてあります:

 ここではドイツの数学者G.F.B. Riemann (1826-1917) によって示されたRiemann 積分につ いて学んでいきます.リーマン積分による「積分可能」の定義は、全ての種類の「積分可能」の定義の基礎になっています。

f(x) は閉区間[a, b] で定義されているとします.この閉区間[a, b] を次のような点xi(i = 1, 2, . . . , n) でn 個の小区間に分割します.

(a = x0 < x1 < x2 < · · · < xi < · · · < xn = b)


 この分割をΔ で表わし, Δxi = xi − xi−1 (i = 1, 2, . . . , n) のうちで最も大きい値を|Δ| で 表わします.
いま,それぞれの小区間[xi−1, xi] のなかに任意の点ξi をとり,Riemann 和 (Riemann sum) とよばれる次の和を考えます.

このとき、

となる実数S が存在するならば,このS をf(x) の定積分(definite integral) といい, f(x) は閉区間[a, b] で積分可能(integrable) であるといいます.また,このS を次のように表わします.

つまり関数f(x) が閉区間[a, b] で積分可能であるということは,分割の仕方および点ξi(i = 1, 2, . . . , n) のとり方に関係なく、各点の関数値の和が一通りに定まるということです.

 

 この定義に従い、関数の積分可能性を以下の様にして調べることができます。

先ず小さな閉区間[a, b] を定めて、

その閉区間の小区間への分割の仕方および点ξi(i = 1, 2, . . . , n) のとり方に関係なく、各点の関数値の和が一通りに定まる(積分可能)か否かを調べることができます。

 

積分可能な例1)

 以下の図の関数f(x)のグラフを考えます。以下のグラフはX=0の点とX=2の点で不連続なので、微分積分学の基本定理により積分可能であると保証されているわけではありません。

そういう関数ですが、リーマン積分という厳密な積分の定義を使って考える事で、この関数が積分可能か否かが判別できます。

この関数は、x=0の点での極限とx=2の点での極限が存在しません。

x=0の点とx=2の点で関数は不連続であり、また、極限も存在しませんが、

-1≦x≦3

区間を細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、その連続で無い点を中間に持つ区間でも積分可能です。

この関数f(x)を積分して、以下の図の関数F(x)を求めることができます。

この関数F(x)を微分して下図のグラフの関数を求めます。

x=0とx=2の点では、微分係数が存在しないので、その点では微分できません。

この(dF(x)/dx)のグラフは、x=0とx=2で関数値が存在しないという点で、その点では関数f(x)と異なるグラフになるという特徴があります。

 

(F(x)は関数f(x)の不定積分

しかし、関数F(x)をx≠0とx≠2となる変数xの範囲:

0<x<2

を定義域にした関数にすれば、その定義域で、関数F(x)の微分が関数f(x)になる。

よって、その定義域:

0<x<2

で定義された関数f(x)の原始関数が、その定義域:

0<x<2

で定義された関数F(x)です。

 

 この微分結果のグラフを再度積分したらどうなるでしょうか。

その積分結果は、再び同じ関数F(x)が得られると考えます。

x=0の点とX=2の点の有無で異なる2つのグラフを積分したら、同じ不定積分F(x)が得られました。

そのため、関数f(x)に積分結果の関数F(x)を対応させる写像変換は、

2個以上の関数f(x)に1つの関数F(x)を対応させる、

複数対1の写像であると考えられます。

 

(注意)

 ちなみに、微分不可能な点がある関数F(x)は原始関数では無いというのは、原始関数を必ず微分可能な関数とした真の原始関数の定義に基づく考えです。

 上の例の、x=0の点とx=2の点で折れ曲がって微分不可能な点を持つ不定積分F(x)は、関数f(x)からx=0の点とx=2の点を除外した関数が微分の結果になる不定積分です。この不定積分の方が原始関数より広い範囲の関数を扱え実用的です。

 

(厳密に考える)

 ここで、厳密に考えると:

原始関数F(x)を微分すると、x≠0とx≠2の範囲でのみ定義されている関数が得られました。

f(x)の不定積分F(x)は、その得られた関数の原始関数です。

しかし、x=0で、f(0)=1であり、x=2で、f(2)=1である関数f(x)は、関数F(x)の微分によっては、x=0での点とx=2での点が得られません。

厳密に言うと、このf(x)の不定積分F(x)は、f(x)の原始関数F(x)ではありません。

しかし、f(x)を定積分するために利用する関数としては、この不定積分F(x)で十分です。

 

積分可能性が保証される条件とは)

 上図の場合では、関数f(x)が不連続な点があっても積分できました。これは、以下の条件を満足したからです。

関数f(x)が積分可能な条件は、関数f(x)の積分区間内でf(x)の原始関数F(x)が連続な場合だけです。

関数f(x)を積分する区間は、原始関数F(x)が連続な範囲の、例えば、

a≦x≦b

という区間積分が可能です。

 例えば、以下の図の、x=0で不連続な関数f(x)は、その連続で無い点以外の変数xの範囲内で連続で、その原始関数F(x)も連続です。その区間で、この関数が積分可能です。

 

 このグラフの関数の事例では、x=0の点では関数f(x)の値が-∞になり、また、広義積分によって原始関数F(x)を計算しても、その原始関数F(x)もx=0で不連続になるので、x=0を含む区間積分することはできません。

積分できない例を示す図)

関数を、上図の区間積分したら、マイナスの無限大になるので、積分が不可能ですので、

例えば、上図の関数をー1から1までの区間積分する事も不可能です。

 

関数f(x)=-1/xを、連続で無い点x=0で積分していけない理由は、

この関数f(x)に対しては原始関数F(x)=1/xが求められ、

その原始関数F(x)が、f(x)の積分範囲内のx=0で、連続で無い点を持ちました。

このように、

関数f(x)の原始関数F(x)が得られても、

f(x)の積分範囲内にF(x)が連続で無い点を持つ場合は、

その積分範囲では関数f(x)の定積分を:F(b)-F(a)

で計算してはいけないと認識する必要があります。

(ハッキリ言うと、不連続な誤解された原始関数の差では計算せず、不定積分(必ず連続関数である)の差で定積分を計算すべきです)

 

一方、

関数f(x)の積分範囲内では不定積分F(x)が連続であったなら、

その積分範囲では関数f(x)の定積分を:

F(b)-F(a)

で計算して良いです。

 

これについては、数学者の藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」が、

不連続関数f(x)の積分を広義積分と呼び、

その積分において、関数f(x)の積分範囲

a≦x≦b

内で連続な不定積分(その積分範囲内に微分不可能な点があっても良い)F(x)が得られたら、

(1)それは、不連続関数f(x)が積分可能である証拠であり、

(2)以下の計算で定積分を計算して良い事が書いてあります。

F(b)-F(a)

よって、

不連続な関数f(x)に対して、

不定積分F(x)が見つかり、その不定積分がf(x)の定積分の連結区間内で連続ならば(その区間外に連続で無い点が有っても良い)、

その不定積分F(x)を使ってf(x)の定積分を計算して良いです。

 

また、小寺平治・著「はじめての微分積分15講」(2,200円)の103ページにも、このことが書いてあります。

 

(誤解された原始関数の差で計算するから間違えるのであって、不定積分(必ず連続関数になる)の差で定積分を計算するならば、間違いは起きません。不定積分(いつも連続関数)の差で定積分を求めたと書く答案が一番正しい答案だと思います。) 

 

 積分可能である事が完全に保証される条件(関数f(x)が積分区間内で連続な関数でなければならない)から外れている場合にあえて積分する例を、更に考えてみます。

 

 以下の例では、被積分関数f(x)がある点で連続な連続関数である場合と、その関数の1点の関数値が存在しない(あるいは0等の値になる、その点では不連続な関数である)場合とが区別されずに、その範囲を積分した結果が同じ値に計算されます。

 

不連続な関数f(x)を:

変数xが整数の点では関数値が存在せず、

変数xが整数以外の点では値が1、

である不連続な関数とします。

(上図において、x=整数の連続で無い点のxの値に対して、そのxの値における極限の値をf(x)の値に置き換えてf(x)=1とすれば関数が、その点でも連続な連続関数になります。そういう連続で無い点のことを、「除去可能な不連続点」と呼びます。)

 この点で連続で無い関数 f(x)のグラフを積分したら、

連続な関数 F(x)=xが得られます。

この連続関数F(x)=xを微分したら、

連続関数であるy=1が得られます。

(関数f(x)の不定積分F(x)について)

 こうして、f(x)の不定積分F(x)を微分すると大部分のxではf(x)には戻りますが、戻らない点もありました。この不定積分F(x)は、上図の関数y=1の原始関数です。

 

 このように、微分積分学では、あらゆる関数に微分積分を行う理論を作ろうとすると、いろいろな難しい問題があることがわかりました。

 積分前の関数f(x)と、微分前の関数F(x)との、変数xの一部の定義域での微分積分のあり得る関係が以下の図であらわせます。

(上図で、関数f(x)は、除去可能な不連続点を除去した関数です。関数F(x)は、関数F(x)の連続で無い点を除いた変数xの範囲でf(x)の原始関数であるとともに、f(x)の原始関数でもあります)

 

 上図の、f(x)とF(x)の関数のセットの例:

以下で定義する関数のセットでは、f(x)にx=xで除去不可能な不連続点があって、積分した結果のF(x)がその連続で無い点の位置xでも変数xで微分可能で、F(x)を微分すると再び連続で無い点を持つf(x)が得られます。

(F(x)の定義)

x≠0の場合:

x=0の場合: F(0)=0,

 

導関数f(x))

この関数F(x)はx≠0の場合も、x=0の場合も、微分可能で、

その導関数f(x)は、以下の式であらわせます。

x≠0の場合の微分

になり、xが0に近づくとー1と1の間を振動します。

この導関数が含むcos(1/x)の関数が以下のグラフであらわす形の関数になるからです。

X=0の場合にも、F(x)は微分可能で:

というように、0になります。

そのため、この導関数f(x)は、x=0で連続ではありませんが、F(x)を微分することで得られます。

この導関数f(x)は積分可能であり、積分するとF(x)になります。

 

 このように、関数の不連続点がらみで、関数f(x)とF(x)の間に難しい関係があることが分かりました。

 

 微分積分の有り得る関係の図には、関数F(x)が変数xの定義域内のある連結区間内で微分可能の場合には、その微分結果の導関数f(x)が、その連結区間で必ず積分可能になり、その積分結果がF(x)になるパターンがあります。そういう連結区間を定義域にした関数F(x)とf(x)だけに限って微分積分をするならば、難しい問題が生じず、計算が簡単になります。

 

 微分積分学で、難しい問題が生じない関数の範囲を把握して、その範囲内で微分積分の計算をすることで、応用上で微分積分を使い易くできます。

 そのため、使い易い関数として、変数xの定義域内の所定の範囲内では、関数の極限が存在し、かつ、関数が連続な「連続関数」 を主に扱う対象にします。また、「微分可能性」で関数の変数xの定義域内の所定の範囲を制限して、微分積分を行う所定の範囲を制限します。その関数の集合において、その制限条件を満足する(変数xの)範囲内で成り立つ法則を把握して、種々の公式を導き出して使うことで微分積分学を最大限に応用できるようになります。

 

 微分積分学は、変数xの所定の連結区間で、微分可能な関数F(x)と積分可能な関数f(x)を定義して、その種の関数の間で微分したり積分をします。「微分可能」と「積分可能」という制限条件を定め、その制限条件を満足する関数を扱うのが微分積分学だと認識することがとても大切です。

 

《下図に各種の関数の集合の包含関係をまとめた》

 

リンク: 

高校数学の目次

 

連続関数の定義

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html
https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/08/blog-post_17.html

(ページ内リンク先)
▽はじめに
▽連続関数
▽微分積分を使いものにする言葉
 ▽開区間での連続と閉区間での連続
 ▽区間の定義
▽連続関数の誤った定義 
▽連続関数の正しい定義 
▽連続関数の定義域 
▽第1の定義の連続
 ▽(高校数学の迷信に注意)
▽第2の定義の連続 
▽連続の事例と、連続で無い事例 
▽一様連続性
▽関数の合成関数の例


(はじめに)
微分積分」の勉強
 高校2年生から、極限・微分積分の「意味がわからない」「つまらない」「教わる計算方法が正しいと言える理由(証明)がわからない」で数学の学習から脱落する高校2年生が多いらしい。
 その脱落の原因を考えます。
 脱落する原因は、微分積分には歴史的に説明のあいまいさがある事、そして、日本の高校の微分積分の教育では、そのあいまいさを更にあいまいにして、異なる事を同じことだと言って説明を単純化したり、証明が難しい事は証明しないで、それが証明されたと感覚的に感じるようごまかして教え、その説明のおかしさに生徒が気付かないよう生徒の数学感覚を麻痺させるよう誘導している事が、脱落の原因だと思います。また、そのように数学感覚が麻痺したまま大学に入ると、大学で学ぶ正しい微分積分が全く理解できなくなります。

 公式を生徒に覚えさせるときに、間違ってはいるが覚えやすい事を生徒に覚えさせる事が、微分積分を生徒にやさしく覚えられるようにした親切な教育である、といった誤解があるから、教わる高校生が混乱することが原因で生徒が脱落するのではないかと考えます。
 ごまかしがある説明は、どう説明しても、論理的には筋が通りません。論理的には理解され得ない事ですので、数学センスのある学生には受け入れられず、それ以上一歩も前に進めなくなると思われます。

 数学の公式を覚える数学センスから考えると、嘘とごまかしは、数学を覚えにくくするので禁物なのです。なぜかと言うと、数学の公式を覚えるというのは公式を導き出す小さなヒントだけ覚えて、そのヒントから公式全体を導き出せるようにすることだからです。
 小さなヒントだけ覚えれば良いので多くの公式を覚える量が本当に少なくて済み、覚えるのが楽になります。
 しかし、嘘とごまかしによっては、そこから正しい公式全体を導き出せ無くなります。そのような不純物(嘘、ごまかし)が心に入ると、もう数学の力は失われてしまい、何もわからなくなります。そのため、数学センスのある学生には、嘘とごまかしは受け入れられないのです。

 数学センスのある学生が学習を一歩も前に進めることができなくなることが無い、安心して微分積分の勉強を進めることができる、ごまかしの無い本は、高校生用の教科書や参考書なのでは無く、大学1年生向けの参考書です。
「やさしく学べる微分積分」
https://bookmeter.com/books/270259
「素晴らしいほどわかりやすい。 高校2年の知識があれば、すらすら読める。 数学苦手な人でも、やさしくシリーズは、微積とベクトルはとっつきやすいと思うので、おすすめです。 」

高校数学の参考書では、ごまかしたところで学習につまづくのですが、、、
この本は、大学1年生(文系)向けの本ですので、ごまかしや嘘がないので、そういうことがなく、一気に(高校数学の範囲を)読めます。

被積分関数の単位】
 微分積分で扱う被積分関数は、均質な基本的な要素の単位で考える。
 具体的には、被積分関数を、全て、1つながりに連続する関数を単位にして考える。1つながりに連続する関数を扱うのであれば、積分の計算で誤りに陥る事を防ぐことができます。

その1つながりに連続する関数が、正しく定義された連続関数です。

《連続関数》
 微分積分の命綱を握っているのが
連続関数の概念です。
その連続関数の高校数学での定義が間違っている事が、微分積分がわからなくなる原因ではないかと考えます。
 連続関数の定義が間違っているので、連続関数という言葉を使ったあらゆる定理が無意味になります。また、その無意味になった定理を少しでも使ったあらゆる定理が無意味になります。

 その連続関数の正確な定義を把握し、頭を整理しましょう。
「関数の連続性と一様連続性」のサイト(ここをクリックした先のサイト)が参考になります。
 そのサイトでの定義は、
『「関数がつながっている,ちぎれていない」のが連続関数。
(xの数直線上の点aでの)連続性の定義:
xの数直線上の点aで関数f(x)が連続であるとは、その点aを含む区間 I とセットで定義する。
その区間 I 内の任意の実数xと,任意の正の実数 ϵ に対して,ある δ が存在して
「 ∣x−a∣<δ なら ∣f(x)−f(a)∣<ϵ 」
が成り立つことが、点aでの関数f(x)の連続性の定義である。』
(点xや点aで関数f(x)が定義されていない場合はこの式が成り立たないものとする)
  また、所定の大きさの連結区間で、その区間内の全ての点aで、以上の式が成り立っていれば、その連結区間を定義域にした関数f(x)は連続関数である。

 そのサイトを見た後で、このサイトも読んでもらえると嬉しいです。

《原始関数》先ず、連続関数のうちの1つである「原始関数」(ここをクリックした先のページ)を学ぶと、連続関数の正しい定義を理解する助けになると思う。

 大学数学における、xの数直線上の点xでの連続性の定義、及び、区間での連続関数の定義では、区間の設定がキーポイントになっている。高木貞治の「解析概論」では、区間を「区域」と呼んでいる。区間は実数がすき間なくつまった1つの連結領域である。関数がちぎれる場合は、関数のグラフの上方向にすき間を空けてちぎれる場合と、変数xの数直線の方向にすき間を空けてちぎれる場合との2通りのちぎれ方がある。その2通りをともに判定できるようにするには、変数xの数直線上の実数がすき間なくつまった区間内の点毎に、ちぎれているか、連続であるかを把握することが好ましい。

連続関数の定義は1817年にBolzanoが中間値の定理を証明する前提条件に連続関数の定義が必要であることを明確にしてから、その定義が定まった。その歴史的経緯から、中間値の定理を成り立たせない関数を連続関数と呼ぶ高校数学の連続関数の定義は偽物である。

なお、高校数学で定義された連続関数という言葉が使い物にならないので、大学数学では、連続関数という言葉を使わずに「区間で連続な関数」という言葉で本来の意味の連続関数をあらわすことにしています。

連続性に関係する定理には、前提条件に「連続関数」という言葉は使わず、「区間で連続な関数」という言葉が使われている。定理を扱うときに「連続関数」という言葉を使わないように注意すること。

(質問)『分数関数は連続関数ですが、中間値の定理は成り立つのですか?x=0のときのグラフがないので成り立たない気がするのですが……。また、例えばf(x)=1/xにおいて、区間[-1,1]は連続なのでしょうか?』
という質問があります。その回答は:
(回答)『変数xの数直線上の点x=0において、f(x)=1/xの値が定義されていないので、その数直線上の点x=0で関数f(x)は連続ではありません。極限の点x=0で関数f(x)が定義されていなくても関数f(x)の極限値が定義されていることに注意。関数f(x)がx=0で連続である大前提は、そのxの点において関数f(x)が極限値を持つことです。点x=0で関数f(x)は極限値を持たない。そのため、その点で関数f(x)は連続ではありません。
区間[-1,1]におけるf(x)=1/xについては、中間値の定理は成り立ちません。その、区間[-1,1]における関数f(x)=1/xは連続関数ではありません。その関数は、その区間で「区間連続」ではありません。』
です。
 なお、関数は定義域と組み合わされて定義されています。
f(x)=1/x, (x>0)という連続関数があり、
それとは異なる関数である、f(x)=1/x, (x<0)という連続関数があり、
f(x)=1/x, (10<x<100)という連続関数もあります。
それぞれの関数は(定義域が異なるので)異なる関数です。

 xの数直線上のxの点の近傍の微小区間を定めてその区間で関数f(x)を解析することで、xの点での関数f(x)の連続性を判定する。
関数には、関数f(x)のグラフの形が設定され、関数値が定義される変数xの範囲(定義域)がある。
 あるxの値の点での関数f(x)の連続性を判定する場合に、そのxの値の近くの微小な区間を使う。関数の定義域が、その微小区間を完全に包含していない場合は、その点で関数f(x)は連続では無い。
 更に、xの数直線上でのある程度の大きさの広がりを持つ区間を定めて、その所定の区間内の全ての実数のxの点で関数f(x)が連続である場合に、その区間の関数f(x)が連続関数であると定義する
(高木貞治「解析概論」では、「関数が区域において連続」と表現している)。

 そのxの所定の区間の領域と関数f(x)の定義域は一部が重なるだけかもしれない。f(x)が連続関数であるためには、その所定の区間の領域の全ての実数がf(x)の定義域に重ならなければならない。所定の区間内の一部にでもf(x)の定義域の外のxの点が入ってその点でx座標方向で関数がちぎれる場合は、その区間のf(x)の関数は連続関数では無いと判定される。

下図の3つの原始関数F(x)が3つの連続関数です。
1つながりのグラフが1つの連続関数です。
上図のグラフでは3つの別々の連続関数があります。

 連続関数について、しっかりした説明が欲しいと思っている人には、参考書として、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている大学生向けの参考書:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」をお勧めします。その本の80ページから88ページまで親切丁寧に連続関数を説明していますので、是非、そのページだけでも一読する事をお勧めします。

微分積分を使いものにする言葉について)
 数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、連続関数を、連結区間で1つながりに連続する関数と定義しています。
 また、使いものにならなくなっている「不連続点」と言われている言葉を使わず、微分積分の概念の理解のために役立つ言葉で、連続点以外の点をあらわす「連続で無い点」という言葉を使っています。そのため、当ブログでも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」に従って、「不連続点」という言葉は使わず、「連続で無い点」という言葉を使います。
高木貞治「解析概論」を読むと「連続点」や「連続では無い点」とは、変数xの数直線上の点(変数xが複素数の場合は、変数xを表す複素数平面上の点)を点と呼んでいる。点とは、関数をあらわすグラフ上の点ではなく、変数xの数直線上の点であることに注意すること。)

(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξ(という変数xの数直線上の点)をf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)

(蛇足かもしれませんが、、、)高校生に正しい微分積分を教えようとする心ある先生が書いている参考書には、高校数学の誤った定義の「連続関数」という言葉が使いものにならなくなったとみなした対応をしている参考書もあるように思います。すなわち、その参考書では高校数学の「連続関数」という言葉は使わずに、大学数学での正しい定義の連続関数をあらわす言葉として「連続な関数」という言葉を使って微分積分を教えている参考書もあります。


《開区間での連続と、閉区間での連続》
(1)第1の定義の連続関数:
(連結した)開放された区間(a<x<b)で連続な関数f(x)。その開放区間内の(xの数直線上の)どの点でも完全に連続な関数。
すなわち、両端が開放された連結区間で1つながりに連続する関数。
(2)第2の定義の連続関数:
(連結した)閉区間( a≦x≦b)で連続な関数。a<x<bとなる(xの数直線上の)どの点でもf(x)が完全に連続。x=aとx=bとの(xの数直線上の)端点では、片側連続である関数f(x)。
すなわち、端点を持つ連結区間で1つながりに連続する関数。

(1)と(2)との2通りの定義があるので要注意です。


ーー【区間の定義】ーー
区間」という数学用語は、変数xの数直線上の1つの範囲内の、実数のすき間がない1かたまりの数の集合をあらわす数学用語である。
《神奈川大学》【定義 14.2.4.】
 a, b を実数とする. a 以上かつ b 以下の実数をすべて集めた集合を [a, b] と書き, これを閉区 間と呼ぶ.
 a より大きくかつ b 未満の実数をすべて集めた集合を (a, b) と書き, これを開区間と呼ぶ.
----定義おわり----


a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。
-∞<x<∞という区間もあります。
区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。
 「区間」という用語は、特に重要な関数である連続関数の連続性を定義するために必要な、連続関数f(x)の変数xの集合体がいつも持っていなければならない連続性という重要な性質が「区間」という概念を用いてあらわされていると思います。
 すなわち、変数xの「区間」の性質で大切なのは、
区間」のなかに変数xの値が隙間なく存在すること。
つまり所定範囲内での隙間が無い全ての実数の集合という概念が「区間」という用語で定義されています。

(A)「0≦x≦2の区間の変数xで定義された関数f(x)がその区間の(xの数直線上の)各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という文では、
f(x)は、0≦x≦2の区間で1つながりに連続した関数f(x)として定義されます。

一方で、区間の概念を用いない定義:
(B)高校数学での、誤った連続関数の定義

「変数xの0≦x≦2の範囲内の値で関数f(x)が定義されていて、その関数f(x)が定義域の各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という高校数学の連続関数の定義では、f(x)は、例えば、
0<x<1で f(x)=0, この定義域内の各点で連続。
1<x<2で f(x)=1, この定義域内の各点で連続。
結局、0≦x≦2の範囲内の全ての定義域の各点で連続という関数も連続関数f(x)にされます。しかし、そのように、すき間をはさんだ2つの区間を合わせた複合区間を定義域とする関数は平均値の定理を満足しない。それは連続関数ではなく、その定義は正しい連続関数の定義ではない。

 この例の様に、「区間」という用語は変数xの数直線上の、すき間がない1かたまりの実数の集合をあらわす。変数xの数直線上の「区間」では、その変数xの範囲内に実数のすき間があってはいけない。
 区間a≦x≦bが命題の中に記載されている場合は、その範囲内の全ての実数xについて命題を検討する必要があります。被積分関数f(x)が定義されていない変数xの(数直線上の)点があっても、その(xの数直線上の)点も、その命題が検討されるべき(xの数直線上の)点の1つです。

【連続関数の誤った定義が問題を起こしている】
 高校の教科書では「定義域」という言葉を使って、
「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である、という。」 
と書かれていると思います。
(注)上の教科書の定義は誤っています。正しくは、「区間で定義された関数f(x)が区間のすべてのxの値で連続であるとき、f(x)は連続関数である、という。」と書くべきです。

 中学生のときから教わって来た「定義域」という言葉の定義が、高校以上の数学では、所定の区間を指すだけではない、区間内の数の集合の様々な部分集合を定義域にできるように変わりました。
変数xの数直線の中の自然数だけの集合の定義域もあります。
 一方で、関数の連続性は、変数xの区間の実数の連続性と、その変数xに対応する変数yの値域における連続性をあらわす概念です。
その概念は、xの定義域が変わってしまっても定義域の変更にともなって変わる概念ではありません。関数の連続性の判定は、関数の変数xの数直線上の点の部分集合である定義域のxの点だけ見て判定するのではない。関数の連続性は、xの数直線上の、x=2の近傍の実数にすき間がない区間内の全ての点を見て判定します。


なお、y=f(x) ≡ 1/xは、x=0で不連続でグラフが途切れた関数ですが、
x=0での関数値が無い、すなわち、x=0は定義域に含まれない。
そして、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので「連続関数」と呼ばれています。
しかし、定義域という言葉は、関数f(x)の値が存在する変数xの値の集合の事であって、その集合に含まれないxの値であっても、変数xの数直線上の値は存在します。

 連続は、変数xの数直線上の点毎に判定します。変数xの数直線上のx=0という点が存在します。その点のxの値0に対してf(x)の値が無いので、数直線上のx=0の点においては、関数f(x)の連続の条件が満足されない。そのため、x=0の点では関数f(x)は連続ではない。このように、xの数直線上のx=0の点で連続でない関数f(x)を「連続関数」と呼ぶのは間違っています。


【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】
区間( a≦x≦b)で連続な関数f(x)は、
その区間内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

 この定理は、誤った連続関数の定義と異なる、正しい連続関数の定義を前提にした定理です。そのため、この定理は、高校数学では無視することが強いられています。

高校数学では、
y=1/xは、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので「連続関数」と呼ばれています。

また、高校数学では、閉区間( a≦x≦b)とは、変数xの値の範囲を限定する式のことであるという間違いが教えられています。

その誤った知識に基づくと、
【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】とは、

変数xの範囲(a≦x≦b)内に関数が連続である定義域を持つ連続関数f(x)は、
その範囲(a≦x≦b)内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

という定理と解釈されます。

この「定理」には以下の反例があります。
関数f(x)=1/xは、
変数xの範囲
-1≦x≦1
内に定義域(ただしx≠0という定義域)が存在し、
-1≦x≦1
内で定義されているどの点でも連続なので、
連続関数です。
しかし、この連続関数f(x)は、
x→0の近くで∞と-∞に発散するので、
有限の値の最大値と最小値を持たない。
(反例1おわり)

(反例2)
関数f(x)=1/xは、
変数xの範囲
-1≦x≦1
内に定義域(ただしx≠0という定義域)が存在し、
-1≦x≦1
内で定義されているどの点でも連続なので、
連続関数です。 しかし、この連続関数f(x)は、

x→0の近くで∞に発散するので、
有限の値の最大値と最小値を持たない。
(反例2おわり)

 しかし、この定理の基礎となっている正しい連続関数の定義が高校数学での連続関数の定義とは違うので、これは定理の反例にはなっていません。 

(注意)
「不連続点」の定義は、その不連続な値で関数値f(x)がある事と決められているため、上の例のx=0のように関数値f(0)が存在しない点は不連続点とは呼ばれません。
 連続点という概念は数学の重要な概念であって、数学的に厳密に定義されています。不連続点という言葉は、その重要な概念である連続点の定義に従属して、その反対の性質を持つ点として定義する必要があります。
 しかし、「不連続点」の定義では、そうせず、たいした根拠も無く、上の例のように関数値が存在しない点は「不連続点」とは呼ばず、連続点の概念とは無関係な言葉として定義されています。
 そのように定義した「不連続点」という概念によっては、上のf(x)≡1/xという関数の例のように、xの数直線上のある値x0の点では、f(x0)が存在しないので連続では無いということが把握できなくなっています。


 しかし、関数の変数xの数直線上の点で判定する連続性は、関数の極限によって関数のグラフの点の値の候補が定められる。そして、変数xの数直線上の点で、そのxの関数の値の極限値とそのxの関数値が一致しないxの点は連続で無い点であると把握されます。それは、その点の関数値が存在しない場合にも当てはまり、関数値が存在しないxの数直線上の点は、連続の条件が満足されないので連続で無い点と把握できます。
 

 数学センスがある学生は、関数の連続点の否定を表すのではない「不連続点」という言葉は数学的に無意味で数学研究に役立たないと見抜き、「不連続点」という言葉は使わず別の言葉「連続で無い点」を自分で独自に定義して自分の研究に役立てると思います。

 そのため、当ブログでは、上の例のx=0の点は、連続で無い点と呼び、「不連続点」という不完全な言葉は使わない事にします。(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)

ここで、関数から所定の点を除去することで連続で無い点を作った場合を考える。
その場合に、その点は定義域から除外されるので、定義域の全てのxで連続であるから、依然として連続関数であるとするならば、下図のように:
xが整数の点が除外され、
整数で無いxについては、
y=1
という、 
xが整数の点が定義されていない、長さ1のグラフの集合の切れ切れのグラフの関数が考えられます。
(中学生のときには、その様な関数は教えられていませんでした。)
この切れ切れのグラフの関数も、定義域内のxで連続なので、連続関数という事になってしまい、不自然です。
これを連続関数とみとめてしまうと、
分母が10000の有理数n/10000の点を全て除去した関数も、定義域内のxで連続なので、連続関数であるとする事になってしまいます。
  また、下図の関数も、定義域内のxで連続なので、
-∞<x<∞
の範囲内で連続関数であるとする事になってしまいます。


また、下図のノコギリ状の関数は不連続関数ですが:
上図の関数g(x)の不連続点のx=0.5, 1.5, 2.5等を全て除去した関数f(x)を作れば、
その関数f(x)も、途切れた関数ではありますが、
定義域内のxで連続なので連続関数という事になってしまい、不自然です。
しかも、事態が深刻なのは、
「連続関数の積分微分可能であり、微分積分学の基本定理が成り立つ」と教わった場合に、
その定理にこの切れ切れのノコギリ状の連続関数f(x)を適用した場合です。
f(x)を積分した関数F(x)を求めてみます。

ここで、f(x)を、定義積分されていないxの点を含めて積分することは、広義積分と呼ばれています。
「[軽装版]解析入門Ⅰ」の177ページの広義積分の説明において、
「f(x)はx=c1,c2,・・・で定義されていなくても良い」
と述べた文脈の中で、
「f(x)が有限個の(xの数直線上の)点x=c1,c2,・・・を除いて連続であるとき」
と述べ(xの数直線上の点x=c1,c2,・・・については、関数の定義域外なので連続ではない)、
その数直線上の点x=c1を含めて積分することを広義積分と呼んでいる。

 このように積分して求めた関数F(x)を微分すると、x=0.5, 1.5, 2.5等では、F(x)の微分係数が計算できません。

それは、「連続関数の積分微分可能であり、微分積分学の基本定理が成り立つ」という教えと矛盾した結果になってしまいます。
すなわち、「微分積分学の基本定理:連続関数の積分微分可能である」と言う教えが、この反例によって否定されてしまうという深刻な問題が起きます。
 そういう問題に直面した高校生に心から同情します。

 もう1つの反例を示します。
 関数f(x)の連続で無い点を定積分の範囲内に入れてしまうと以下の間違いをおかします。
F(x)=1/xをxで微分したら

になるので、
関数

の、複合区間を定義域にする誤った原始関数がF(x)=1/xです。そして、変数xの積分区間に、f(x)が不連続になるx=0を含めた、xが-1から1までの区間で、
関数f(x)の定積分を、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使って、  F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
という 計算で求めると、明らかに間違えます。


上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分はf(x)のグラフの面積にならなければなりません。そのため、定積分の答えは、マイナス無限大にならなければなりません。
しかし、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使った上の計算結果はそれと全く違い、面積が正の値の2になり、
全く間違った答えになりました。
高校で習う、
「原始関数F(x)を使って、以下の計算で定積分する。」

に従って、
(高校で教えられていない必須作業の、関数f(x)が定積分区間で連続か否かのチェックをしないで)
複合区間を定義域にする誤った原始関数F(x)の差を計算すると、上の計算の例の様に、
元の関数のグラフの面積が計算できず、
間違った答えになります。

 高校数学の誤った定義が固着した連続関数という言葉を使わずに、(大学数学が実行しているように)本来の連続関数をあらわす「区間で連続な関数」という言葉を使うと良い。

 連続関数を定義域で連続な関数として定義する事の重要な第1の欠陥は、連続関数という言葉を使ってあらわされている全ての定理は、それとは異なって定義された連続関数に対して成り立つ定理であるから、それらの定理全体を無視することを強いる事だからです。


 また、この、連続関数の誤った定義が排除されるべき理由は、この定義は、1つながりの連続関数を組み合わせた関数群まで指定してしまう事にあります。
 それは、常に、互いに無関係な関数群の全てを考慮する事を強いる、数学的考察をする際の負担を重くする。数学の問題を、解きやすい単純な要素に分解して解きやすくする考察をじゃまする(場合分けして問題を解くことを不可能にする)複雑さを持ち込むからです。
 数学は、なるべく考察対象を単純化して表現することで、問題を解く助け手になるべきです。しかし、この定義はそれに反しているからです。

 「関数の点での連続性」の定義では、変数xの数直線上の、関数の定義域ではなく、区間が主役です。xの数直線上のxの点の左右の部分を含む微小区間によって関数の連続性を判定する場合を考える。その場合は、その微小区間内では、たとえ関数が定義されていなくても、強制的に、その微小区間のxの数直線上の点を見て点xでの連続性を判定する。

 xの点の左右の部分を含む微小区間によって関数の連続性を判定する場合は、関数の点の右側極限と左側極限とその点での関数値が一致する事がその点での関数の連続性の条件です。
 xの数直線上の点xでの関数値が存在しても、右側極限か左側極限の一方が存在しなければ、そのxの点で関数は連続ではありません。
 一方、右側極限と左側極限が存在しても、その点での関数値が定義されずに存在しなければ、その点で関数は連続ではありません。定義されていないことが点の連続性の判定に影響します。関数の極限によって見出されたその点は連続で無い点と判定されます。

 連続関数は変数xの連結区間内でグラフの点が連続している関数と考えるのが自然な数学的発想です。変数xの数直線上の連結区間内のすべての点で、たとえそのxの点では関数の値が定義されず存在しなくても、xの点における連続性の条件を検査します。

 xの数直線上の所定の連結区間内の全てのxの点で連続な関数を連続関数と定義する(大学での)定義が、自然な数学的発想から導かれる正しい連続関数の定義であると考えます。
 高校数学の連続関数の定義は、この正しい定義に反しているから誤りであると考えます。

このような誤った連続関数の定義が高校数学の教科書に書かれていたのは以下の原因によると考えられます。 

[室蘭工業大学 山口 格] 数学者の吉田洋一が以下のようになげいています。「“論証"・論証"とやかましくいっておきながら,微積のところへ来ると,とたんにいいかげんな議論でごまかしている。一ーまた高校ではごまかさざるを得ないだろう。高校数学の目的は生徒のあたまを混乱させることにあるのだろうか。」

 現在の高等学校の教科書は,積分の概念の説明を回避している。


 1997年からは、日本の高校の数学IIで面積が無定義に用いられという、数学センスを否定する蛮行が行なわれた。そして、関数f(x)のグラフとx軸で囲まれる領域の面積を,x方向で微分するともとの関数f(x)になり、面積の微分がf(x)となるという本末転倒なことを教えるようになった。

 また、大学で学ぶ、正しい連続関数の定義の知識は、高校の微分積分の教義から見れば異端の知識です。そのため、それを知っていることを隠してください。
 ガリレオ・ガリレイが「太陽が地球の周りを回っているのでは無く、地球の方が動いている」と言ったときにどのような目にあったかの歴史を学んでください。
 くれぐれも、授業中に、先生や生徒が間違った連続関数の定義を使っているときに、その誤りを指摘したりしないように、慎重に、周りの空気を読んで行動してください。自分の身が高校数学から異端審問され無いように大人の対応をしてください。ただし、この誤りは、連続関数に係る定理に通用しませんが、、、
 この助言に従い「空気を読む」先輩や「空気を読む」数学の先生が、このように誤った情報が教え続けられるように守り、維持して来たとは思いますが、仕方がありません。

 このような、数学センスに反する無価値な情報をおぼえることを強制された場合、それを覚えることを拒否して良いと考えます。
 一つの選択としては、理系に進むのを止めて文系に進むことがあります。
 しかし、数学が好きな学生には、それはできない、と考えます。
その学生のために、以下の様に連続関数を学ぶことを推薦します。

《連続関数の正しい定義》
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」で定義されている連続関数の定義のように、大学では、定義域として、xの数直線上の実数を完全に含んで連結している1つながりの「区間」の全てのxの点で関数値が定義されている関数f(x)に限って連続関数を定義しています。


小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」80ページ:
定義2.2
f(x)をある区間I(xの数直線上のある連結する範囲内の全ての実数xの集合)で定義された関数とする。
このとき、区間Iという集合の要素(実数x)の中の1つの実数 a において、
ならば、
  f(x)は 数直線上の点a で連続である。あるいは 、xの数直線上の点x=a で連続であるという。関数f(x)がそのxの区間Iに属する全ての(実数の)xの点で連続であるとき、f(x)を連続関数、または x の連続関数とよぶ。
(定義おわり)
 
区間 I で定義された関数f(x)がそのxの定義域
I(すなわちxの区間)に属するxの数直線上のすべての実数の点で連続であるとき,f(x)を連続関数とよぶ」
という表現が正しい連続関数の定義です。
ここで、「区間」という言葉が使われた時点で、それは1つにまとまった連結区間であって、それは、ある点で切れてバラバラになった複数の領域のことでは無い事に十分に注意する必要があります。
 複数の(連結されない)区間で定義された関数という意味では無く、1つの連結区間で定義された関数に限る、という意味です。
「xの数直線上の連結区間Iの点xで定義された関数f(x)が、そのxの区間Iのxの数直線上のすべての実数の点で連続であるとき,f(x)を連続関数とよぶ」
という文で覚えた方が定義の勘違いを防げるのではないかと思います。
連続関数のグラフは1つながりの曲線であらわされるのです。
 また、「区間」の定義は、その区間の範囲内に実数が隙間無く完全に密集して入っている変数xの範囲であると定義されています。そのため、「区間で定義された関数f(x)」と言う文の意味は、「区間の範囲内の全ての実数xに対してf(x)の値が有限の値で存在している」という意味を持っています。
 更に、「区間」の定義は、ある数aからbまでの連結した1つながりの連結領域が区間と定義されている事に注意して欲しいと思います。 閉区間[a,b]や、a,bを含めない開区間(a,b)等がありますが。

東海大学(貴田 研司)~連続関数の厳密な定義~
「関数f(x) がある区間 I に属するすべての値 x で連続であるとき 、f(x) は区間 I で連続である,または区間 I で連続関数であるという.」


高木貞治「解析概論」10.連続関数
の24ページで、
「或る区域内において、変数xが連続的に変動するに伴って連続的に変動する関数f(x),すなわち、いわゆる連続関数」
と言って連続関数を定義している。

26ページでは、
f(x)=(x^2-1)/(x-1)において、
x=1において、
f(x)は意味を有しないが、
x=1において、
「式の欠点から生ずる不連続」である
と述べている。
f(x)=(x^2-1)/(x-1)は、x=1において連続ではない。
x=1で関数f(x)が定義されていないということは、
x=1でf(x)が不連続であることを判定する妨げにはならない。

「解析概論」をもっと読んでいくと、
30ページで、
「12.区域・境界
区域、境界~、ここで少しくその意味を明確にしておこう」

32ページで、
「領域・閉域
区域というのは、一つの点集合である。・・・また区域が連結されていることを要求する」
と言っている。
ここまで読めば、
連続関数f(x)が
「或る区域内において、変数xが連続的に変動するに伴って連続的に変動する関数f(x)」
と言う定義の意味が、
連結した区域(区間)で連続関数f(x)が定義されている、
ことがはっきり分かる。

大学数学では、連続関数を、例えば関数f(x)=1/x, (x≠0)のようなx=0を除いた定義域を持つ関数f(x)のような、分断された定義域では連続関数を定義していない。

 大学数学における、xの数直線上の点x=aでの連続の定義、及び、区間での連続関数の定義では、区間の設定がキーポイントになっている。
 関数f(x)のグラフの形が設定され、また、関数値が定義されているxの値の範囲(定義域)がある。ここで、xの数直線上のx=aの点の近傍の微小区間を定めてその区間で関数f(x)を解析することで、x=aの点での関数f(x)の連続性を判定する。
 また、xの数直線上でのある程度の大きさの広がりを持つxの点の所定の区間を定めて、その所定の区間内の全ての実数のxの点で関数f(x)が連続である場合に、その区間の関数f(x)が連続関数であると判定している。
 そのxの所定の区間の領域と関数f(x)の定義域は一部が重なるだけかもしれない。f(x)が連続関数であるためには、その所定の区間の領域の全ての実数がf(x)の定義域に重ならなければならない。所定の区間内の一部でもf(x)の定義域の外のxの点が入ると、その区間のf(x)の関数は連続関数では無いと判定される。
 このことは、x=aの点の近傍の微小区間で関数f(x)のx=aの点の連続性を判定する場合も同様である。xの微小区間内の全ての実数の一部にでもf(x)の定義域の外のxの点が入ると、x=aの点において関数f(x)は連続ではないと判定される。
(1つ目の連続関数)
上図の関数で、連結区間x>0で定義されるy=1/xは(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義されます。
(2つ目の連続関数)
上図で、連結区間x<0で定義されるy=1/xも(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義されます。
これらの2つの連続関数は、それぞれ、連結区間で連続な1つながりのグラフの関数です。
それらの2つが連続関数という定義で充分と考えます。
 この2つの区間を合わせて1つの定義域にした関数は、もはや、連続関数では無いことに注意してください。
-∞<x<∞で(x≠0)とする定義域は、x=0で切れているので1つながりの連結領域では無い。この定義域を持つ関数を、x=0の点を含む連結区間と重ねて解析すると、その関数は、x=0では連続では無いので、連続関数では無いと判定される。
 以下の関数の例を考えると、2つの区間を合わせて1つの定義域にした関数が連続関数にならない例として分かり易いと思います。
(1つ目の連続関数)
連結区間x>0で定義されるy=(1/x)は(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義されます。
(2つ目の連続関数)
連結区間x<0で定義されるy=-100も(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義されます。
これらの2つの連続関数は、それぞれ、各関数が定義されている連結区間で連続な1つながりのグラフの関数です。
(定義域を合成すると)
 この2つの連続関数の定義域を合わせて1つの定義域(x≠0)にして定義した関数は、定義域内のどの点でも連続ではありますが、x=0を含む区間を設定して解析すると、連続関数では無いと判定される。

1つにつながらない関数の定義域の全て包む区間を設定すると、その関数は連続関数とは判定されない。その関数を、高校数学で連続関数と定義することは誤っています。

 また、関数の定義域は、関数を定めるために自由に定めるものであって、関数を定義する数式は、その関数値を定めるために補助的に使われる手段であって、定義域を定める元というものでは無い。関数の定義域というものは、もっと自由に定められるものです。

 高校生も、大学での正確な定義に合わせて、連続関数とは、
連結区間で1つながりに連続している関数の事と覚えると良いと考えます。
高校の先生の問題への解答には、自分が考える「区間」を、不正確ではありますが、「定義域」という言葉に置き換えて書けば良いと考えます。
定義域という言葉を、実数を完全に含む区間という言葉に置き換えて使うので、大分不正確なあいまいな言葉になりますが、仕方がありません。

定義域が、a≦x≦bである、、、
等と解答に書いて、区間という概念が損なわれないように工夫して解答を書いて欲しいと思います。
(大学の入試問題の解答に「区間」という言葉を使って解答するのは問題ありません。)

(数学者の本に聞いてみた)
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の80ページに連続関数の定義が書いてあり、連続関数の定義を明確に
(1)第1の定義の連続関数
 「連結な開区間で1つながりに連続している関数」
(2)第2の定義の連続関数
 「連結な閉区間で1つながりに連続している関数」
に限っています。
すなわち、連結区間で連続な1つながりの関数のみを連続関数と定義し、それ以外の連続関数の定義を排除しています。これは、微分積分の定理が連続関数を使うときに必ず使う形に整合させた連続関数の定義です。

 また、小平邦彦は「不連続点」という言葉は使わず、「連続で無い点」という言葉を使って、不連続点の替りにしています。有理式:f(x)/g(x)のg(x)=0なる点は、連続では無いのであるから、「連続では無い点」です。
関数y=1/xのx=0となる点は連続では無い点です。

【高校数学の連続関数の定義と不連続点の定義のあいまいさ】
 積分で利用する原始関数は1つながりに連続な連続関数です。連続関数を連結区間で連続な関数であると定義するなら、連続関数は1つながりに連続している関数であると明確に定義できます。しかし、高校の教科書の定義である、
「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である、という。」
と定義するならば、1 つながりに連続している関数を複数合わせた途切れた関数も連続関数であると定義することになります。
そうすると、1つながりに連続している関数である原始関数を連続関数という言葉を使っては正しくあらわせなくなります。
 そういう連続関数の定義のあいまいさは、微分積分をわからなくしている原因の1つと考えます。

 また、上図の関数を2つに分ける分け目の点では、関数値が無限大に発散して関数値が定義されません。そういう、関数値が定義されていない点は定義されていないからという理由でその点が連続とも不連続とも言えないと定義しているようです。
 しかし、その分け目の連続で無い点では、関数値f(x0)が定義されていないので、以下の、点が連続する条件を満足していません。
関数の極限の
がf(x0)に等しい場合に、 
x0 で関数f(x)が連続であると定義する。(定義おわり)
 分け目の連続で無い点は、f(x0)が定義されていないので、この条件を満足していません。そのため、その点で連続で無い点です。
 しかし、その連続で無い点を、関数値が定義されていないから関数にかかわる定義ができず、不連続点であると言えないようです。連続で無い点は不連続点と定義すべきと思います。
(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、(xの数直線上の点)x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)
 この理不尽さも、微分積分をわからなくしている原因の1つと考えます。
 当ブログでは、微分積分を分かり易くするため、数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」に従って、使い物にならなくなった「不連続点」という言葉を使わず、「連続で無い点」という言葉を使うようにします。

《連続関数の定義域の指定》
 また、連続関数は、所定区間とセットにして「連続関数」が定義され、その所定区間外で関数が連続で無い点を持つても良いことにも注意する必要があります。常に所定区間とセットで連続関数を考えます。その所定区間を連続関数の定義域とするのです。
上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続ですが、
その0≦x≦2の区間内の部分の関数f(x)は、
区間0≦x≦2で定義された連続関数です(第2の定義の連続関数)。
 定義域に関する、このことも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の82ページに書いてありました。

 不連続関数という表現は誤解を招く表現です。関数を扱う区間内に連続で無い点があれば「不連続関数」と表現できると思いますが、その連続で無い点を避けた区間では、その関数は連続であって「連続関数」になりますので、「不連続関数」という表現は不適切な表現であり、そういう表現は使わない方が良いと考えます。

【第1の定義の連続】
「微分積分学入門」(横田 壽)の39ページ近くに、連続の第1の定義が書いてあります。

極限を求める点が連続で無い点であっても定義される関数の極限、

を考えるときには、
x0 での関数f(x)の値f(x0)が定義されている必要はありませんでした。
また,x0 での関数f(x)の値 f(x0) が定義されていても、その値 f(x0) がx0 での極限値
と一致する必要もありませんでした。

そのように無制限な関数の条件に、新たに、
極限値とそこでの関数の値が等しいという条件を加えてみます。

そうすることは,以下で説明するように、
関数がある点で連続である
という条件を加えるという意味を持ちます.
【定義1.4 (連続) 】《イプシロンデルタ論法を使う》
 関数f(x) は少なくとも、微小な連結区間

x0 − δ<x<x0 + δ
の全ての実数の点で定義されている.
(ここで、δは小さな正の実数)
が成り立つとき, f(x) はx = x0 で連続(continuous) であるという.
(定義のおわり)

(定義の意味)この連続の定義の意味は、関数の極限のときより条件が厳しくなり,今度は、更に、
「f (x) は x =x0= c で定義されている必要がある.」
という条件が、極限の条件に追加して加えられた。すなわち、連続性の判定条件は極限の判定条件よりも厳しくなった。
 関数の極限の定義では、x=c において、f(x)が定義されていなくても、f(x)のx=c における極限があるかないかを判定した。
連続性の定義においても、x=c において、f(x)の極限が存在することが必要である上にさらに条件がきびしくなったのである。もちろん、極限が存在しなければ、当然ながら、x=c で f(x) が定義されていてもいなくても、その点x=c で関数 f(x) が連続とは言えないのである。

(定義されていない点で関数が不連続)
 また、関数 f(x) が定義されていない(変数xの数直線上の)点 x=c では、「定義されていない」ということがあるだけで、その点で関数 f(x) が不連続である。例えば、「関数 f(x) が a≦x≦b で連続」ということが意味することは、a≦x≦b の範囲内に f(x) が定義されていない(数直線上の)点 x=c は存在しないということを意味する。

(高校数学の迷信に注意)
 高校数学では、
関数f(x)=1/xについては、
x=0では、
f(x)の連続性を判定しない、
と解釈しているようです。

 それは間違いで、
x=0の点では、f(x)は、
連続の定義が満足されないので、
連続ではない。

-----(定義の言い換え)----
 この定義をハッキリ把握するために、想像力を膨らませて、この定義を、以下の様に噛み砕いて自分の言葉で言い換えて定義を覚えてください。

(なお、この定義をかみ砕いて考える考え方が、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の80ページから81ページに詳しく書いてあります。)

(0)
 この、関数の1点での連続の定義は、関数の1点の近傍の幅を持った区間で連続を判定しています。
 すなわち、関数の連続を確認する点x=x0 については、その点の座標の周りに広がりを持つ区間の、少なくとも、x0 − δ<x<x0 +δ
(ここで、δは小さな正の実数)
という連結区間の全ての実数値xで関数f(x)が定義されていることが大前提です。
区間」と言う場合は、それは1つの連結区間であって、その区間内の全ての実数が関数の定義域である事を意味します。
(1)
次に、
x0に近い(値x0も含む実数)xを考える。
(2)
x0から、正の値δの範囲内でずれる、x0も含む全ての実数xについてf(x)を考える。
 この定義における「全ての実数x」の意味は、例えば関数の変数xの定義域による変数xの値の制限も無視して、その制限に制約されずにx0から、正の値δの範囲内でずれる値の実数変数xは全て考慮することを意味します。
(3)
その全てのf(x)の値のバラツキの誤差を求める。
その誤差<εとする小さな正の値εでバラツキの範囲を定める。
すなわち、どの実数x(ただし、x=x0の場合も含む)の値の関数値f(x)についても、
-ε< (f(x)-f(x0))<ε
となる正の値εを定める。
(4)
xの値のx0からずれる範囲を定める正の値δを十分小さくすれば、
その範囲内の全ての実数値のx(値x0も含む)によるf(x)の値のバラツキが小さくなり、バラツキの範囲の値 ε がいくらでも小さくできるならば;
f(x)はx=x0 で極限値を持ち、かつ、その極限値がf(x0)に等しい。
その場合に、
関数f(x)は、
x=x0 で連続である。
すなわち、
が成り立つ場合に、関数f(x)はx=x0 で連続になります(第1の定義の連続)。

言い換えると、
「点x0でf(x)が連続である定義は、
どんなに小さい正の値εに対しても、
十分小さい正の値δを使ってxの区間を、
x0 − δ<x<x0 +δ (x=x0となる場合も含む)
に限定すれば、どのxの値でも、
-ε< (f(x)-f(x0))<ε
が成り立つようにできる事である。」
----(定義の言い換えおわり)----------- 


(注意1)このε-δ論法による連続の第1の定義は、
xの区間の x0 − δ<x<x0 +δ を使っていますので、その区間の全ての実数についてf(x)の値が存在する(定義されている)事を条件にしています。そのため、以下の例の様に関数値f(x)が区間で定義されていない場合は、連続であるとは定義しません。
x=0,1,2だけで定義された関数f(x)の例:
f(0)=10,
f(1)=11,
f(2)=12,
この関数f(x)は、
どんなに小さい正の値εに対しても、
正の値δ=0.5を使ってxの範囲(区間では無い)を、
1− δ<x<1 +δ

に限定すれば、
その範囲内のf(x)の定義域のxの値は、x=1のみになる。
その全てのxの値(x=1だけですが)に対して、
-ε< (f(x)-11)<ε
が成り立つようにできます。

ε=1/10000という小さなεの場合でも上の式が成り立ちます。対象となるxはx=1しか無いからです。

しかし、そうであっても、f(x)はx=1で連続ではありません。
連続の定義では、区間
1− δ<x<1 +δ
内の全て実数に対して、f(x)の値が存在する事を要請しているが、関数f(x)はその条件を満足しないからです。

(注意2)ここで、ε-δ論法が出て来ましたが、ε-δ論法というものは、εとδを使った極限の表現の手段であって、そのε-δ論法を使った「連続」の定義は、上の形の第1の連続の定義に限られません。
以下で説明する片側連続についても、第1の連続の定義とは形を変えた別のε-δ論法によって片側連続が定義されます。

【第2の定義の連続】
  【関数が閉区間(a≦x≦b)で連続という定義】
 閉区間(a≦x≦b)で定義された、第2の定義の連続関数f(x)は、多くの場面で使われます。
区間(a≦x≦b)で連続な連続関数f(x)と呼ばれますが、
その定義域の端点では、片側連続であり、両側からは連続していなくても閉区間で連続と定義しますので要注意です。
(この第2の定義の連続(片側連続)を、「第1の定義の連続を判定する区間が、関数の定義域によって制限されることで連続性が判定される」、という考えは誤りです。連続性を判定する区間は、関数の定義域によっては狭められないからです。もし、関数f(x)の連続性を判定する変数xの区間内に関数f(x)が定義されない点があれば関数f(x)は連続では無い。)

上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続ですが、
その0≦x≦2の区間内の部分は、
区間0≦x≦2で定義された関数f(x)が区間0≦x≦2で連続な連続関数である」
と言います(第2の定義の連続関数)。

(第2の定義の連続関数の端点での連続の定義)
 変数xの数直線上の点 c を含む区間を、閉区間a≦x≦bで定義する。
その区間内の全ての x=cの点で、
その点c毎に、区間内の任意の実数 x と,任意の正の実数 ϵ に対して,ある δ が存在して
「 ∣x−c∣<δ なら ∣f(x)−f(c)∣<ϵ 」
が成り立つならば、
その連結区間を定義域にした関数f(x)は連続関数である。

そして、
区間の端点x=bの点で、
x → b− 0 またはx → b− と表わす左側極限値f(b-)がf(b)である左連続によって連続です。
すなわち、端点bでのグラフの点(b,f(b))が左側極限の点(b-,f(b-))と連続している(片側連続性)。

また、
区間の端点x=aの点で、
x → a+ 0 またはx → a+と表わす右側極限値f(a+)がf(a)である右連続によって連続です。
すなわち、端点aでのグラフの点(a,f(a))が右側極限の点(a+,f(a+))と連続している(片側連続性)。

そういうふうに、区間(a≦x≦b)で定義された関数f(x)は、その閉区間の端点a,b間で連続な関数f(x)であると定義されています。

関数f(x)が右側極限や左側極限で区間の端点に片側連続性で連続につながっているので、そういう表現をする理由になっています。
-----第2の定義の連続関数の説明おわり-----------

 以下では、第1の定義の連続の説明に戻ります。

《連続の事例と、連続で無い事例》
(不連続の事例1)
下図の関数は、x=0で関数f(x)が定義されてないので、x=0は連続で無い点です。

このように、連続関数から、1つの変数xの関数値f(x)を取り除くと、その除去された点で関数が連続とは言えなくなります。

(事例2)
下図の関数は、定義域が
0<x<1
なので、x=0は連続で無い点です。
(事例3)
下図の関数は、x=0でf(x)が存在するので、
x=0で不連続です。

この不連続な関数から、x<0の点を全て除去した下図の関数は、
区間での関数に係る(第2の定義の連続関数)の定義に従い:
連結区間0≦x≦1の端点のx=0で連続です。


(関数f(x)が連続な連結区間で連続関数を定義する)
 例えば、下図の関数f(x)は、x=0は連続で無い点ですが、その点以外の図の、関数が連続な連結区間a≦x≦bで関数f(x)を切り出して、
その部分を、第2の定義の連続関数であると定義できます。
すなわち、上図の、0<aである閉区間(a≦x≦b)で連続な第2の定義の連続関数であると定義できます。

(事例4)
(事例4その1)
上図のような関数f(x)の変数xの定義域内に、xの無理数の値に対する関数値f(x)が無い(定義されていない)部分がある場合は、その部分では、変数xの有理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

 すなわち、関数f(x)が変数xが0≦x≦2において、変数xが有理数の場合だけで関数値が定義され、変数xの無理数の値に対する関数値f(x)が存在しない関数f(x)の場合は:
(注意:0≦x≦2という範囲は、そのxが全ての実数をあらわしてはいないので「区間」と呼ぶことはできません)
定義されている有理数の点x=aで関数f(x)が連続であるためには、少なくとも、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
区間内の全ての実数で、
|f(x)-f(a)|<ε (式2-2)
となる条件を満足しなければならないのにもかかわらず、
この式2-1の区間内に、必ず無理数xがあり、
その無理数では関数f(x)が定義されていないので、式2-2を満足しない。
そのため、変数xの定義されている有理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

(事例4その2)
その1の場合の逆に:
上図で、関数f(x)が変数xが0≦x≦2において、変数xが無理数の場合だけで関数値が定義され、変数xの有理数の値に対する関数値f(x)が存在しない関数f(x)の場合は:
(注意:0≦x≦2という範囲は、そのxが全ての実数をあらわしてはいないので「区間」と呼ぶことはできません)
定義されている無理数の点x=aで関数f(x)が連続であるためには、少なくとも、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
区間内の全ての実数で、
|f(x)-f(a)|<ε (式2-2)
となる条件を満足しなければならないのにもかかわらず、
この式2-1の区間内に、必ず有理数xがあり、
その有理数では関数f(x)が定義されていないので、式2-2を満足しない。
そのため、変数xの定義されている無理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

(備考1)
 この例の様に、連続性を判定する点x=aで関数の連続性(および極限)を考える場合に、定義域の変数として無理数だけ、あるいは有理数だけに限定された定義された数だけでは無く、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
区間内の全ての実数について確かめて関数f(x)の連続性を判定します。関数f(x)の定義域でf(x)が定義されていない数であっても、区間内では全ての実数を考えて連続性を判定します。

(備考2)
 上の(事例4)の関数の姉妹の関数として、
変数xが有理数の場合に、
f(x)=x
となり、変数xが無理数の場合に、
f(x)=100
となる関数は、
明らかに、x=0で不連続です。

(連続性を考える場合の根本的な注意点)
 有理数全体は、x座標を表す直線上に密集している。しかし、有理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 無理数全体も、x座標を表す直線上に密集している。しかし、無理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 実数全体が、直線上にすきま無く並べることができるのである。

(備考)
 連続性は実数まで考えることで正しく定義できるので、関数を連続関数であると定義すると、その関数は、変数xの実数の連結区間で定義される必要があります。
 その変数xの値として有理数の値のみしか扱わず無理数の値を全く意識しない場合でも、微分される関数が実数でも定義されているというバックグラウンドをその関数に持たせる必要があると考えます。

 関数がある点x0で連続であるという関数の連続性の定義は、上記の様に定義できます。
 この連続性の定義に関連して、その姉妹にあたる「極限の定義」においても、変数xを実数まで考えて、変数xがある点x0の近傍の全ての実数で所定の値 lim に収束する場合にのみ、関数に極限が存在するものと定義しています。

(第2の定義の連続関数の連続な区間と定義域)
変数xが、
連結区間a≦x≦b
で関数f(x)が(第2の定義の連続関数として)連続であると定義された関数f(x)は、
関数f(x)の定義域は、
連結区間a≦x≦b
であり、
関数f(x)が完全に連続な連結区間は、
a<x<b
です。
そしてf(x)の右側極限f(b-)=f(b)であり、
f(x)の左側極限f(a+)=f(a)です。

(事例5:微妙に不連続な関数の例)
x≠0の場合:
f(x)≡ sin(1/x)
x=0の場合:
f(0)≡0

上図の関数 f(x) は
x→0で
Yの極限値が存在しません。
そのため、関数f(x)はx=x0 ≡0で不連続です。
関数f(x)は、xが0に近づくとー1と1の間を振動します。
 この関数f(x)は、xがx0 ≡ 0の値に無限に近い点で、f(x)の値が0になるかもしれないし、-1から1の間のどの値になるかもしれないので、
x→0+
における極限値が何になるかがわかりません。
そのため、
x→0+における関数値f(x)と、
x=0における関数値f(0)=0
が同じであるか異なるかどうかも分かりません。
それでも、関数の連続性の定義の【定義1.4 (連続関数) 】に従って、この関数f(x)がx=0で不連続であると言えます。
①先ず、関数f(x)は区間(x0 − δ, x0 + δ) で定義されています。
②x=0での関数の連続を定義する極限の式:
が成り立つかどうかを調べてみます。
x→0+におけるf(x)の値が振動して、極限値が存在しないので、
この式は成り立ちません。
そのため、この関数f(x)は、x=0で不連続です。

(事例6:極限が存在しない点が無限にあり不連続な関数)
上図のノコギリ関数g(x)を使って以下の関数を作ります。
この関数f(x)は、以下のx座標で極限が存在しない。
その他、
x=奇数/(整数×2)
の点では極限値が存在しない。
極限値が存在しないのであるから、その点では関数は連続ではありません。

 このf(x)のグラフは、関数f(x)の極限が存在しない有理数のxの値では、このグラフf(x)が不連続です。

 おもしろいことに、この関数f(x)のグラフは、
x=無理数の位置で「連続」です。
そのxの無理数の値から無限に近い距離にも、有理数の値のxでf(x)が連続で無い点があるにもかかわらずです。

(一様連続性:関数の値のバラツキが一斉に小さくなる事)
 f(x)が連結な閉区間a≦x≦bで1つながりに連続な関数であれば、閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理によって、f(x)の値はある最大値と最小値の間の値に限られている。
 そのように、ある最大値と最小値の間の値に限られている、閉区間で連続な関数f(x)の領域を以下の図の様に2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ2を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ2は、分割前の領域での関数の最大値と最小値の差Δ1よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ3を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ3は、分割前の領域での差の最大値Δ2よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する操作を繰り返し、
差の最大値Δ4、Δ5、Δ6・・・
を求めて行く。
すると、関数f(x)が連続関数の場合は、領域を分割する毎に、全分割領域での差の最大値Δnは無限に小さくなって行く。(これは、以下のようにして証明できる)

(仮説)
 もし関数の最大値と最小値の差Δnが無限に小さくならないで、ある値β>0に留まるとする。
(仮説の検証)
 その場合は、どんなに区間を分割しても、関数値のばらつきがβである微小区間が残り続ける。
ばらつきがβ未満の微小区間を分割してもばらつきがβである微小区間が生まれる事はないので、関数値のばらつきがβである微小区間は、関数値のばらつきがβである微小区間の分割によって生まれる。
すなわち、関数値のばらつきがβである微小区間が、それを無限に分割しても、関数値のばらつきがβであり続ける。その微小区間は点に収束し、その点の近くで関数値のばらつきが0に収束する事はない。
 その場合は、その点で関数f(x)の連続の条件を満足しない。
これは、f(x)が連続である条件に反する。
 ゆえに、この仮説が成り立たず、
関数の最大値と最小値の差Δnは無限に小さくなっていく。

(一様連続性)
以上の様に、ある関数f(x)の各分割領域を更に2分の1に分割する操作をn回繰り返していき、各分割領域の関数f(x)の最大値と最小値の差(関数の値のばらつき)Δを求める。
(1)そのとき、全ての分割領域での関数の値のばらつきΔの最大値Δnが有限の値で存在すること。
(2)この操作を繰り返して分割領域を無限に小さくすると、
全ての分割領域での関数の値のばらつきの最大値Δnが、無限に小さくなって行く。
(すなわち、全ての分割領域での関数の値のばらつきがΔnより小さく、そのΔnが無限に小さくなっていく)
これが成り立つ関数f(x)の性質を「一様連続」であると言います。

 この説明は、以下の様に定義されている一様連続の言い換えです。
「変数xの数直線上の区間[a,b]において、どんなに小さな正の値εについても、全ての分割領域での関数f(x)の値のばらつきがε以下にできる、分割領域の小さな幅δ=(b-a)/(2^n)が存在するとき、その関数f(x)は一様連続である。」
(一様連続の説明おわり)

《関数の合成関数の例》
以下の関数f(x)とg(x)の合成関数f(g(x))を考える



すなわち、以下の式で表される合成関数になります。

大学数学で定義した正しい連続関数同士の合成関数f(g(x))であっても、関数g(x)の値域が関数f(x)の定義域からはみ出す場合には、上記の例のように、切れ切れの合成関数が得られます。関数を合成する場合には、関数g(x)の値域をf(x)の定義域の範囲内におさめる節度が必要です。

リンク:
関数の極限の定義
高校数学の目次


閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理

先ず、閉区間で連続な関数の最大値と最小値の定理を高校生が理解できないようにする高校数学で、学生に間違いを教えている間違いを正す必要があります。


微分積分を使いものにする言葉について)

 数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、微分積分を使いものになる道具にするため、数学の定理で連続関数を使うときに必ず使う形に整合させて連続関数を定義しています。すなわち、連続関数という言葉を、連結区間で1つながりに連続する関数と定義しています。

 また、使いものにならなくなっている「不連続点」と言われている言葉を使わず、微分積分の概念の理解のために役立つ言葉で、連続点以外の点をあらわす「連続で無い点」という言葉を使っています。そのため、当ブログでも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」に従って、「不連続点」という言葉は使わず、「連続で無い点」という言葉を使います。

(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)

 

(注意)連続関数の正しい定義は、

(1)第1の定義の連続関数:

(連結した)開放された区間(a<x<b)で連続な関数f(x)。その開放区間内のどの点でも完全に連続な関数。

すなわち、両端が開放された連結区間で1つながりに連続する関数。

(2)第2の定義の連続関数:

(連結した)閉区間( a≦x≦b)で連続な関数。a<x<bとなるどの点でもf(x)が完全に連続。x=aとx=bとの端点では、片側連続である関数f(x)。

すなわち、端点を持つ連結区間で1つながりに連続する関数。

との2通りの定義があります。

上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続ですが、

その0≦x≦2の区間内の部分の関数f(x)は、

区間0≦x≦2で定義された連続関数です(第2の定義の連続関数)。

 

《区間という用語の意味》

 また、「区間」という数学用語は、実数の集合として定義されている用語である事に注意が必要です。

a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。

-∞<x<∞という区間もあります。

区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。

(A)「0≦x≦2の区間の変数xで定義された関数f(x)がその区間の各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という文では、

f(x)は、0≦x≦2の区間で1つながりに連続した関数f(x)として定義されます。

一方で、
(B)「変数xの0≦x≦2の範囲内の値で関数f(x)が定義されていて、その関数f(x)が定義域の各点で連続であるとき,f(x)は誤解された連続関数である」という文では、f(x)は、例えば、
0<x<1で f(x)=0, この定義域内の各点で連続。
1<x<2で f(x)=1, この定義域内の各点で連続。
結局、0≦x≦2の範囲内の全ての定義域の各点で連続な誤解された連続関数f(x)として定義されます。
 この例の様に、「区間」という用語は変数xの集合をあらわす用語であって、変数xの範囲をあらわす用語では無いことに注意する必要があります。

 区間a≦x≦bが命題の中に記載されている場合は、その範囲内の全ての実数xについて命題を検討する必要があります。被積分関数f(x)が定義されていない変数xの点があっても、その点も、その命題が検討されるべき点の1つです。

 

【連続関数の誤った定義が問題を起こしている】

 高校の教科書では「定義域」という言葉を使って、

「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である、という。」 

と書かれていると思います。

 しかし、中学生のときから教わって来た「定義域」という言葉の定義が、高校以上の数学では、所定の区間を指すだけではない、様々な場合を含むように変わりました。

変数が自然数だけの関数の定義域は自然数だけといったぐあいです。

定義域が自然数だけの関数の連続性を考えるのは、とても不自然です。

 

なお、y=1/xは、x=0で不連続ですが、

x=0での関数値が無い、すなわち、x=0は定義域に含まれない。

そして、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので「連続関数」と呼ばれています。

しかし、定義域という言葉は、関数f(x)の値が存在する変数xの値の集合の事であって、その集合に含まれないxの値であっても、変数xの数直線上の値は存在します。

(定義域のあるxの値に対しf(x)の値が存在しないと関数を決めるだけで、どの変数xの値も定義域から排除できます)

xの値の所定区間において、x=0の値に対してf(x)の値が無いので、x=0において関数f(x)は連続ではありません。そのため、f(x)を「連続関数」と呼ぶには違和感があります。

 

(注意)

「不連続点」である条件は、その不連続な値で関数値f(x)がある事と決められているため、上の例のx=0のように関数値f(0)が存在しない点は不連続点とは呼ばれません。

不連続点という言葉では、変数xの所定区間でf(x)が存在しないためf(x)が連続で無い事実を表現できなくなっています。

そのため、当ブログでは、上の例のx=0の点は、連続で無い点と呼び、「不連続点」という不完全な言葉は使わない事にします。

 

【高校数学での連続関数の定義の間違い】

 高校数学で連続関数を定義域で連続な関数として定義する事の重要な第1の欠陥は、連続関数という言葉を使ってあらわされている全ての定理は、それと異なる連続関数の定義を前提にしている定理であるから、それらの定理の全てを無視すること、更に、その無視された定理を少しでも使う全ての定理を無視することを強いる事だからです。

 第2の欠陥は、連続関数を定義域で連続な関数として定義する事ができても、それによって定義された「連続関数」は、何ら数学的に特徴的な関数を定義したことになっていない、数学の研究には何も役立たない無意味な定義だという欠陥があります。

 

【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】

区間( a≦x≦b)で連続な関数f(x)は、
その区間内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

 

 この定理は、誤った連続関数の定義と異なる、正しい連続関数の定義を前提にした定理です。そのため、この定理は、高校数学では無視することが強いられています。

 

高校数学では、

y=1/xは、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので「連続関数」と呼ばれています。

 

また、高校数学では、閉区間( a≦x≦b)とは、変数xの値の範囲を限定する式のことであるという間違いが教えられています。

 

その誤った知識に基づくと、
【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】とは、

変数xの範囲( a≦x≦b)内に関数が連続である定義域を持つ連続関数f(x)は、
その範囲( a≦x≦b)内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

 

という定理と解釈されます。

 

この「定理」には以下の反例があります。

関数f(x)=1/xは、

変数xの範囲

-1≦x≦1

内に定義域(ただしx≠0という定義域)が存在し、

-1≦x≦1

で定義されているどの点でも連続なので、

連続関数です。しかし、この連続関数f(x)は、

x→0の近くで∞と-∞に発散するので、

有限の値の最大値と最小値を持たない。

(反例おわり)

 

 しかし、この定理の基礎となっている連続関数の定義が高校数学の定義とは違うので、これは定理の反例にはなっていません。 

 

 以下で、正しい連続関数の定義と、区間という数学用語の正しい定義に基づき、この最大値・最小値の定理を証明します。

 

【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】

区間( a≦x≦b)で連続な関数f(x)は、
その区間内で最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)


この定理を正しい連続関数の定義に基づき、以下の様に言い換える事ができます。

 

(最大値・最小値の定理の言い換え)

連結区間( a≦x≦b)の範囲内の全ての実数xに対して有限の関数値f(x)が存在する。そして、その範囲内の全ての点で関数f(x)が1つながりに連続な連続関数であるものとする。

その場合は、その範囲内( a≦x≦b)での関数の値f(x)の全てが、有限な値の最大値と最小値との間にある。

(定理の言い換えおわり)


 この定理は、明らかなように見えますが、そう見えるのは、連続関数というものを自分の主観で限定して考えているからです。

「下図の様に、連続する線を曲げて上下に振動させるグラフを作る。
そのグラフの最大の振幅のx座標の半分の値のx座標の点を、先のグラフ最大の振幅の2倍の振幅に変形させたグラフを作る。
この作業を無限に繰り返して連続なグラフを変形させていったグラフの関数f(x)を作ったらどうか?」

「連続な関数のグラフを切らずに作ったグラフの関数だからf(x)は連続関数では無いのか?そして、最大値Mが無限に大きいグラフが作れるのではないか?」

というように問われたら、

「 いや、そうなったら、それは、もはや、その無限にグラフを細かくしている点x=0で不連続になり、連続関数で無くなります。」(事実はこの通りですが)

と即答できるでしょうか。

こういう問題に論理的に(数学的に)返答できるようにするため、連続が、以下の様に数学的に定義されています。

 

【第1の定義の連続】

「微分積分学入門」(横田 壽)の39ページ近くに、連続の第1の定義が書いてあります。

極限を求める点が連続で無い点であっても定義される関数の極限、

を考えるときには、

x0 での関数f(x)の値f(x0)が定義されている必要はありませんでした。

また,x0 での関数f(x)の値 f(x0) が定義されていても、その値 f(x0) がx0 での極限値

と一致する必要もありませんでした。

 

そのように無制限な関数の条件に、新たに、

極限値とそこでの関数の値が等しいという条件を加えてみます。

 

そうすることは,以下で説明するように、

関数がある点で連続である

という条件を加えるという意味を持ちます.
【定義1.4 (連続) 】
 関数f(x) は少なくとも、微小な連結区間

x0 − δ<x<x0 + δ

の全ての点で定義されている.

(ここで、δは小さな正の実数)

が成り立つとき, f(x) はx = x0 で連続(continuous) であるという.

 

-----(定義の言い換え)----

 この定義をハッキリ把握するために、想像力を膨らませて、この定義を、以下の様に噛み砕いて自分の言葉で言い換えて定義を覚えてください。

 

(なお、この定義をかみ砕いて考える考え方が、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の80ページから81ページに詳しく書いてあります。)

 

(0)

 この、関数の1点での連続の定義は、関数の1点の近傍の幅を持った区間で連続を判定しています。

 すなわち、関数の連続を確認する点x=x0 については、その点の座標の周りに広がりを持つ区間の、少なくとも、x0 − δ<x<x0 +δ

(ここで、δは小さな正の実数)

という連結区間の全ての実数値xで関数f(x)が定義されていることが大前提です。

区間」と言う場合は、それは1つの連結区間であって、その区間内の全ての実数が関数の定義域である事を意味します。

(1)

次に、

x0に近い(値x0も含む実数)xを考える。

(2)

x0から、正の値δの範囲内でずれる、x0も含む全ての実数xについてf(x)を考える。

 この定義における「全ての実数x」の意味は、例えば関数の変数xの定義域による変数xの値の制限も無視して、その制限に制約されずにx0から、正の値δの範囲内でずれる値の実数変数xは全て考慮することを意味します。

(3)

その全てのf(x)の値のバラツキの誤差を求める。

その誤差<εとする小さな正の値εでバラツキの範囲を定める。

すなわち、どの実数x(ただし、x=x0の場合も含む)の値の関数値f(x)についても、

-ε< (f(x)-f(x0))<ε

となる正の値εを定める。

(4)

xの値のx0からずれる範囲を定める正の値δを十分小さくすれば、

その範囲内の全ての実数値のx(値x0も含む)によるf(x)の値のバラツキが小さくなり、バラツキの範囲の値 ε がいくらでも小さくできるならば;

f(x)はx=x0 で極限値を持ち、かつ、その極限値がf(x0)に等しい。

その場合に、

関数f(x)は、

x=x0 で連続である。

すなわち、

が成り立つ場合に、関数f(x)はx=x0 で連続になります(第1の定義の連続)。

 

言い換えると、
「点x0でf(x)が連続である定義は、
どんなに小さい正の値εに対しても、
十分小さい正の値δを使ってxの区間を、
x0 − δ<x<x0 +δ (x=x0となる場合も含む)
に限定すれば、どのxの値でも、
-ε< (f(x)-f(x0))<ε
が成り立つようにできる事である。」
----(定義の言い換えおわり)----------- 

 

(注意1)このε-δ論法による連続の第1の定義は、

xの区間の x0 − δ<x<x0 +δ を使っていますので、その区間の全ての実数についてf(x)の値が存在する(定義されている)事を条件にしています。そのため、以下の例の様に関数値f(x)が区間で定義されていない場合は、連続であるとは定義しません。

x=0,1,2だけで定義された関数f(x)の例:

f(0)=10,

f(1)=11,

f(2)=12,

この関数f(x)は、

どんなに小さい正の値εに対しても、
正の値δ=0.5を使ってxの範囲(区間では無い)を、
1− δ<x<1 +δ

に限定すれば、

その範囲内のf(x)の定義域のxの値は、x=1のみになる。

その全てのxの値(x=1だけですが)に対して、
-ε< (f(x)-11)<ε
が成り立つようにできます。

ε=1/10000という小さなεの場合でも上の式が成り立ちます。対象となるxはx=1しか無いからです。

 

しかし、そうであっても、f(x)はx=1で連続ではありません。

連続の定義では、区間

1− δ<x<1 +δ

内の全て実数に対して、f(x)の値が存在する事を要請しているが、関数f(x)はその条件を満足しないからです。

 

(注意2)ここで、ε-δ論法が出て来ましたが、ε-δ論法というものは、εとδを使った極限の表現の手段であって、そのε-δ論法を使った「連続」の定義は、上の形の第1の連続の定義に限られません。

以下で説明する片側連続についても、第1の連続の定義とは形を変えた別のε-δ論法によって片側連続が定義されます。

 

【第2の定義の連続】

  【関数が閉区間(a≦x≦b)で連続という定義】

 閉区間(a≦x≦b)で定義された、第2の定義の連続関数f(x)は、多くの場面で使われます。

区間(a≦x≦b)で連続な連続関数f(x)と呼ばれますが、

その定義域の端点では、片側連続であり、両側からは連続していなくても閉区間で連続と定義しますので要注意です。

上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続ですが、

その0≦x≦2の区間内の部分は、

区間0≦x≦2で定義された関数f(x)が区間0≦x≦2で連続な連続関数である」

と言います(第2の定義の連続関数)。

 

(第2の定義の連続関数の端点での連続の定義)

(1)

 関数f(x)が、閉区間a≦x≦bで定義され、a<x<bの点でf(x)が連続であって、

(2)

 閉区間の端点bでは:

x → b− 0 またはx → b− と表わす左側極限値f(b-)がf(b)である左連続によって連続です。

すなわち、端点bでのグラフの点(b,f(b))が左側極限の点(b-,f(b-))と連続している(片側連続性)。

 

左連続の定義は、ε-δ論法によって以下の様に表現することができます。

どんなに小さい正の値εに対しても、

十分小さい正の値δを使ってxの区間を、

b-δ<x≦b (x=bとなる場合も含む)

に限定すれば、どのxの値でも、

-ε< (f(x)-f(b))<ε

が成り立つようにできるならば閉区間の端点x=bで連続である。

 

(3)

 閉区間の端点aでは:

x → a+ 0 またはx → a+と表わす右側極限値f(a+)がf(a)である右連続によって連続です。

すなわち、端点aでのグラフの点(a,f(a))が右側極限の点(a+,f(a+))と連続している(片側連続性)。

 

右連続の定義は、ε-δ論法によって以下の様に表現することができます。

どんなに小さい正の値εに対しても、

十分小さい正の値δを使ってxの区間を、

a≦x<a+δ (x=aとなる場合も含む)

に限定すれば、どのxの値でも、

-ε< (f(x)-f(a))<ε

が成り立つようにできるならば閉区間の端点x=aで連続である。

 

そういうふうに、区間(a≦x≦b)で定義された関数f(x)は、その閉区間の端点a,b間で連続な関数f(x)であると定義されています。

 

関数f(x)が右側極限や左側極限で区間の端点に片側連続性で連続につながっているので、そういう表現をする理由になっています。

-----第2の定義の連続関数の説明おわり-----------

 


最大値・最小値の定理は、最大値がある事を示せば、同様にして最小値がある事も示せるので、最大値がある事を証明するだけで十分である。


【最大値の定理の証明】最大値の定理の対偶の定理:

 閉領域内で関数値f(x)が有限の値Mに制限されない場合には、その閉領域内の少なくとも1つの点の座標xの関数値f(x)が無限大に発散し、その点xでは関数が不連続になる事を、以下の様にして証明することで、最大値の定理が証明できます。

上図の閉領域で、関数値f(x)が有限の値Mに制限されないならば、その閉領域を、以下の様に半分に分割した2つの閉領域(ただし、その分割点は両側の閉領域に重複して含ませる)の少なくともどちらかの閉領域で、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない。

そして、その、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない閉領域を、更に半分に分割した2つの閉領域の少なくともどちらかの閉領域で、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない。

そして、その、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない閉領域を、更に更に半分に分割した2つの閉領域の少なくともどちらかの閉領域で、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない。

この操作を無限に繰り返すと、
関数値f(x)が有限の値Mに制限されない領域が無限に小さくなっていきます。
その場合に、その領域内の点のx座標が、極限値xgに収束する(ここをクリックした先の定理18)。

その極限値xgの近くでは、
どんなに小さなδを選んでも、
xg − δ<x<xg +δ 
(ただし、x=xgの場合を含む)

を満足する実数値xの領域内に、
無限に小さな領域ではあるが、関数値f(x)が有限の値Mに制限されない領域が含まれます。
そのため、その領域の実数xのなかに、
関数f(x)の値を有限の値Mに制限しない無限に大きく発散させる点のxがあります。
その点のxでは、

小さなεを選んで、ある有限の値 lim に関して、
-ε< (f(x)-lim)<ε
とすることができません。


それは、
x→xg (ただし、x≠xg)
でのf(x)の極限値が無いか、

又は、

(x≠xgでの)極限値(それは有限の値Mに制限される)があっても、

x=xgの場合のf(x)が有限の値Mに制限されず、

すなわち、

f(xg)は、

(x≠xgでの)x→xgでのf(x)の極限値とは異なる、

ということを意味します。

 

それは、

x=xgでf(x)が不連続である事を意味します。

よって、
閉領域で関数値f(x)が有限の値Mに制限されない場合には、
その閉領域内に、
f(x)が不連続になる点x=xg
が存在する事を意味します。

(最大値の定理の対偶の定理の証明おわり)

 

(補足)

 以上の証明の中で出てきた、

(x≠xgでは)有限の値Mに制限される極限値があっても、

x=xgの場合のf(x)が有限の値Mに制限されない関数とは、

例えば、大学の数学で学ぶ、ディラックデルタ関数というものがあります。

ディラックデルタ関数はδ(x)と表現され、

x≠0のとき: δ(x)=0

x=0のとき: δ(x)=無限大(有限の値Mに制限されない)

そして、

xのー1から1の範囲で定積分すると:

となる関数です。

 

(最大値の定理の証明のポイント)
 以上の、最大値の定理の証明のポイントは、関数f(x)の定義される区間内の関数値f(x)が有限の値Mに制限されない場合を詳しく調べた、定理の対偶の定理を証明した事にあります。

 関数値f(x)が有限の値Mに制限されないという事は、

(1)f(x)の値が有限の値Mに制限されない区間がある場合は、f(x)の値が制限されない区間の幅を無限に狭め、その無限に狭めた区間を少なくとも1点に収束させる極限がある事を確認した事。

(2)そして、その収束した極限の点xgでは、関数f(x)が不連続になる事をしらべた事が、最大値の定理の証明のポイントです。

 

 よって、この対偶が成り立ち:

区間で連続である関数においては、f(x)が有限の値Mに制限されないという事が無いのです。

 

(備考1)

なお、下図の様に、少なくとも1つの端(x=a)が開区間で連続な関数については、そのx=aとなる点が無限に発散する点になり得るので、f(x)がx=aの極限で無限に発散する場合があり得ます。

 なお、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている本:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、

【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】を、閉区間の連続関数は一様連続であり、開区間の関数は一様連続で無いという、関数の本質的な性質を使って証明しています小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の85ページにその証明が書いてありますので、是非、一読する事をお勧めします。

 

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」で学ぶならば、微分積分が無駄なく勉強できて良いと思います。

 

(一様連続性と最大値・最小値の定理の関係)

 こうして証明できた、閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理によって、

f(x)が連結な閉区間a≦x≦bで1つながりに連続な関数であれば、f(x)の値はある最大値と最小値の間の値に限られている。

 その、最大値と最小値の間の値に限られている、閉区間で連続な関数f(x)の領域を以下の図の様に2等分する。

(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)

そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ2を抽出する。

関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ2は、分割前の領域での関数の最大値と最小値の差Δ1よりも小さくなる。

更に、各領域を2等分する。

(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)

そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ3を抽出する。

関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ3は、分割前の領域での差の最大値Δ2よりも小さくなる。

更に、各領域を2等分する操作を繰り返し、

差の最大値Δ4、Δ5、Δ6・・・

を求めて行く。

すると、関数f(x)が連続関数の場合は、領域を分割する毎に、全分割領域での差の最大値Δnは無限に小さくなって行く。

(もし関数の最大値と最小値の差Δnが無限に小さくならない点があったならば、その点は連続では無い点である。連続関数f(x)には、そのような点は無い。) 

 

(一様連続性)

以上の様に、ある関数f(x)の各分割領域を更に2分の1に分割する操作をn回繰り返していき、各分割領域の関数f(x)の最大値と最小値の差(関数の値のばらつき)Δを求める。

(1)そのとき、全ての分割領域での関数の値のばらつきΔの最大値Δnが有限の値で存在すること。

(2)この操作を繰り返して分割領域を無限に小さくすると、 

全ての分割領域での関数の値のばらつきの最大値Δnが、無限に小さくなって行く。

(すなわち、全ての分割領域での関数の値のばらつきがΔnより小さく、そのΔnが無限に小さくなっていく)

これが成り立つ関数f(x)の性質を「一様連続」であると言います。

(一様連続の説明おわり)

 

その様に無限に小さい差Δnは、関数f(x)の値の総和(リーマン積分)への影響が無限に小さいため、この関数f(x)は、リーマン積分が可能です。

 

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の85ページが、

【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】を、閉区間の連続関数は一様連続であり、開区間の関数は一様連続で無いという性質を使って証明しているのは一様連続性が、最大値・最小値の定理が成り立つ根本的な原因であるという数学的視点が大事である事を教えたいからではないかと考えます。是非、一読をお勧めします。

 

リンク:

高校数学の目次

 

積分可能の定義と原始関数と不定積分の求め方

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html
https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/08/blog-post_17.html

微分積分」の勉強
(ページ内リンク)
▽はじめに
▽積分とは何か(リーマン積分)
  ▽《区間という用語の意味》
▽一様連続性
▽不正確な情報から真実を見抜くコツ
▽(外部リンク)原始関数とは何か
▽(外部リンク)不定積分とは何か
▽微分積分学の基本定理
▽積分可能な例

▽必ずある間違い
▽広義積分 
▽(外部リンク)置換積分等の積分の計算に潜んでいる広義積分
▽(外部リンク)変な積分 


(はじめに)
高校数学では、「原始関数を求める」のが積分だと言われています。
しかし、大学で教わる微分積分も調べて、積分とは何かを
熟慮した結果、
積分とは「不定積分を求めること」(不定積分とは何かをハッキリさせなければなりませんが)である事である事が分かりました。

高校生は、ハッキリ教えられないでも、動物的な本能で、
積分で求めるべき”原始関数”は1つながりに連続でなければならない」
という経験を積んで来たと思います。それは、実は原始関数の定義に初めから明示しなければならない条件だったというあいまいさが原始関数の定義にはありました。
また、求める目標の原始関数の目標を明確化すると、それは、原始関数に近い関係にある不定積分でした。

積分で正しい答えを求めるために探していたのは、不定積分だったのです。

(1)不定積分F(x)は、それを微分すると、有限個の微分不可能な点を除く大部分の点で、被積分関数f(x)が得られる関数の事です。
(2)不定積分は、(複合区間を定義域にする誤った原始関数とは違い)明確に1つながりに連続な関数である関数です。それは、複合区間を定義域にする原始関数の変数xの定義域を、F(x)が1つながりに連続になる範囲に限定する事で実現します。
(3)不定積分は、原始関数と違って、微分したとき、被積分関数f(x)の数点の関数値と一致しないでも良い関数です。大部分のxでf(x)と一致するだけで良いのです。

そういう不定積分を”原始関数”のつもりで求めるだけで良いのが積分の計算です。

以下では、その不定積分F(x)と、原始関数と、被積分関数f(x)との関係を見ていきましょう。

微分積分を使いものにする言葉について)
 数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、微分積分を使いものになる道具にするため、数学の定理で連続関数を使うときに必ず使う形に整合させて連続関数を定義しています。すなわち、連続関数という言葉を、連結区間で1つながりに連続する関数と定義しています。
 このページで使う「連続関数」という言葉は、高校数学で教わる誤った定義の連続関数では無く、大学で学ぶ正しい定義の連続関数(1つながりに連続な関数)をあらわします。
 また、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、使いものにならなくなっている「不連続点」と言われている言葉を使わず、微分積分の概念の理解のために役立つ言葉で、連続点以外の点をあらわす「連続で無い点」という言葉を使っています。そのため、当ブログでも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」に従って、「不連続点」という言葉は使わず、「連続で無い点」という言葉を使います。
(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)

 なお、高校2年の微分積分の勉強のためには、「やさしく学べる微分積分」(石村園子)を読むと良いと思います。高校3年になって本格的に微分積分を学びたくなった学生は、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている本:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」を読むと、微分積分が無駄なく勉強できて良いと思います。

積分とは何か】
 以下では、先ず、積分とは何かを、積分可能のハッキリした定義を知ることで頭を整理しましょう。
 積分については,ここをクリックした先のpdfファイルにある原教授の以下のコメントが大切です。
---(原教授のコメント開始)---------
 積分については高校でも習ってはいるが,その基礎を突き詰めていくといろいろと困ったことがでてくる.
特に 「積分微分の逆演算」として定義すると,「ある関数 f の積分を求めよ」という問題や「この関数の積分は定義できるか?」という問題でハタと困ってしまう.
微分して f になるような関数がわからない場合,高校までの知識ではお手上げだ.)
この節では高校までの知識はいったん忘れて,「積分とは何か」「積分をどのように定義すべきか」か ら話を始める.

4.1 積分(定積分)の定義
 ということで,まずやるべきは「与えられた関数f(x) に対して,その積分を定義すること」である.
これから見ていくように,かなり広いクラスの関数に対してその積分(定積分)を定義することができる.
積分を通して不定積分も定義できるので,高校までの知識とのつながりがつくことになる.
・・・
積分の最も素朴な定義はこれから紹介する「リーマン和」に基づくもので、、、
---(原教授のコメントおわり)------


積分の計算の基本)
定義6.1(Riemann積分) 同志社大学 押目教授

区間[a, b]上において有界(有限な最大値と有限な最小値を持つ)な関数f(x)に対して、
以下のn+1個の有限個の小区間への分割の仕方、および、その小区間内の点ξi(i = 1, 2, . . . , n) の位置のとり方に関係なく、各点の関数値の和Sが一通りに定まる時,
f(x)は閉区間[a, b]において(Riemann)積分可能という.

(注意)無限大の数の小区間へ分割するのでは無いことに注意 。

 以下のグラフのように、面積を分割して、分割した要素の総計を求めてグラフの面積を計算する手法が「積分」です。
 この計算のための法則性を整理して覚えることが「積分」を勉強するということです。

《区間という用語の意味》
 また、 「区間」という数学用語は、変数xの数直線上にある、実数がすき間なくつめられた1かたまりの実数の集合として定義されている事に注意が必要です。
a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。
-∞<x<∞という区間もあります。
区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。
 区間a≦x≦bが命題の中に記載されている場合は、その範囲内の全ての実数xについて命題を検討する必要があります。被積分関数f(x)が定義されていない変数xの点があっても、その点も、その命題が検討されるべき点の1つです。
 「区間」という用語は、特に重要な関数である連続関数の連続性を定義するために必要な、連続関数f(x)の変数xの集合体がいつも持っていなければならない連続性という重要な性質が「区間」という概念を用いてあらわされています。
 すなわち、変数xの「区間」の性質で大切なのは、
区間」のなかに変数xの値が隙間なく存在すること。
つまり所定範囲内での隙間が無い全ての実数の集合という概念が「区間」という用語で定義されています。

 例えば:
f(x)=1/xの定義域を(0,∞) (={x|xは0より大きい実数})
とすれば、f(x)は区間で定義された関数です。
g(x)=1/xの定義域を(-∞,0)∪(0,∞)(={x|xは0でない実数})
とすれば、g(x)は区間で定義された関数ではありません。
(f(x)とg(x)は定義域が異なっているため、f(x)とg(x)は同じ関数ではありません)

(「リーマン積分可能」の定義)
微分積分学入門」(横田 壽)の124ページから125ページ近くに「リーマン積分可能」の定義が書いてあります:(注:横田教授が芝浦工業大学を退官したため、この教科書を無料で掲載するWebページが無くなりました。この本は書店で購入できます。

その他に、高校2年生が勉強するのに適切な、書店で購入できる微分積分の参考書の、「やさしく学べる微分積分」(石村園子)の104ページに「積分可能」の定義が書いてあります。 

 ここではドイツの数学者G.F.B. Riemann (1826-1917) によって示されたRiemann 積分につ いて学んでいきます.リーマン積分による「積分可能」の定義は、全ての種類の「積分可能」の定義の基礎になっています。
f(x) は閉区間[a, b] で定義されているとします.この閉区間[a, b] を次のような点xi(i = 1, 2, . . . , n) でn 個の小区間に分割します.
(a = x0 < x1 < x2 < · · · < xi < · · · < xn = b)

 この分割をΔ で表わし, Δxi = xi − xi−1 (i = 1, 2, . . . , n) のうちで最も大きい値を|Δ| で 表わします.


(注目ポイント)
 高校数学で教える区分求積法では、区間を細分した部分区間のグラフの高さf(x)を求めますが、そのxの位置が部分区間の中の特定の位置に固定されています。
その固定をしないで、どの位置のxでのf(x)を棒グラフの高さにして計算しても良い、
というのがリーマン積分です。


いま,それぞれの小区間[xi−1, xi] のなかの任意の位置に点ξi をとり,Riemann 和 (Riemann sum) とよばれる次の和を考えます.
このとき、
となる実数S が存在するならば,このS をf(x) の定積分(definite integral) といい, f(x) は閉区間[a, b] で積分可能(integrable) であるといいます.また,このS を次のように表わします.
つまり関数f(x) が閉区間[a, b] で積分可能であるということは,小区間への分割の仕方および小区間内の点ξi(i = 1, 2, . . . , n) の位置のとり方に関係なく、各点の関数値の和が一通りに定まるということです.

 この定義に従い、関数の積分可能性を以下の様にして調べることができます。
先ず小さな閉区間[a, b] を定めて、
その閉区間の小区間への分割の仕方および小区間内の点ξi(i = 1, 2, . . . , n) の位置のとり方に関係なく、各点の関数値の和が一通りに定まる(積分可能)か否かを調べることができます。

(注意)
 ここで、点ξiの位置のとり方に関係なく関数値の和が定まるためには、
少なくともその区間の全ての実数値に対して有限の値の関数値が存在しなければなりません。
それが、積分可能性の大前提です。

(リーマン積分の例1)
 下図の左上、右上、左、の3つの各グラフを、x軸の0から値xまでリーマン積分してグラフの面積を計算すると、xの値毎の面積が、3つの場合で共通して右下のグラフになります。
(リーマン積分の例2)
以下の図の関数f(x)のグラフを考えます。
この関数f(x)の、
-1≦x≦3
の閉区間を小区間に細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、リーマン積分可能です。
この関数f(x)を積分して、以下の図の不定積分の関数F(x)を求めることができます。
この様な積分の解は上図のグラフの不定積分F(x)であらわせます。
 この関数F(x)は、x=0とx=2で微分不可能です。一方、原始関数は、定義域の連結区間内の全ての点で微分可能な関数です。そのため、その微分不可能な点x=0とx=2を定義域の連結区間内に含む関数は原始関数ではありません。この様な簡単なグラフの面積を求める問題であっても、変数xのあらゆる実数を定義域とする原始関数を使おうとすると、問題を解く事ができません。
 しかし、不定積分の部分として、定義域を連結区間0<x<2に狭くした原始関数を不定積分の定義域の一部に組み込んで使う事ができます。
上の関数の例では、全実数の定義域の一部の0<x<2の範囲を定義域とするf(x)に対して原始関数F(x)が存在します。それを不定積分に組み込みます。また、定義域が2<xの範囲の原始関数F(x)が存在します。また、定義域がx<0の範囲の原始関数F(x)が存在します。その3つの原始関数を連続につないで不定積分を作れば良いのです。

【一様連続性】どの様な関数がリーマン積分可能であるか一様連続性
 以上で説明したリーマン積分が、閉区間で連続な関数を例にして説明されるのは、その関数がリーマン積分可能だからです。
 リーマン積分可能のキーワードは、一様連続性です。閉区間で連続な関数は一様連続です。すなわち、積分区間を均等に分割して分割数を多くすると、すべての分割部分の中での関数値のばらつきを一斉に小さくできる(これを一様連続と言う)。そのため閉区間で連続な関数は、分割数を多くして、一斉に、分割部分内の関数値のバラツキを小さくできるので、積分の値のバラツキを小さくでき、リーマン積分可能です。
(極限では無限大に発散する点に向けて連続している(開区間で)連続な関数は、その無限大に発散する点とは接続してはいませんが、その開区間の領域をいくら細かく分割しても、発散点の近くでは、未だ分割部分内の関数のバラツキが大きいです。そういうふうに、分割した区間内での関数の値のバラツキを一斉に小さくできない(一様連続で無い)関数は、積分可能にはなりません。) 

(関数の値のバラツキが一斉に小さくなる説明)
 f(x)が連結な閉区間a≦x≦bで1つながりに連続な関数であれば、閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理によって、f(x)の値はある最大値と最小値の間の値に限られている。
 そのように、ある最大値と最小値の間の値に限られている、閉区間で連続な関数f(x)の領域を以下の図の様に2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ2を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ2は、分割前の領域での関数の最大値と最小値の差Δ1よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ3を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ3は、分割前の領域での差の最大値Δ2よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する操作を繰り返し、
差の最大値Δ4、Δ5、Δ6・・・
を求めて行く。
すると、関数f(x)が連続関数の場合は、領域を分割する毎に、全分割領域での差の最大値Δnは無限に小さくなって行く。(これは、以下のようにして証明できる)

(仮説)
 もし関数の最大値と最小値の差Δnが無限に小さくならないで、ある値β>0に留まるとする。
(仮説の検証)
 その場合は、どんなに区間を分割しても、関数値のばらつきがβである微小区間が残り続ける。
ばらつきがβ未満の微小区間を分割してもばらつきがβである微小区間が生まれる事はないので、関数値のばらつきがβである微小区間は、関数値のばらつきがβである微小区間の分割によって生まれる。
すなわち、関数値のばらつきがβである微小区間が、それを無限に分割しても、関数値のばらつきがβであり続ける。その微小区間は点に収束し、その点の近くで関数値のばらつきが0に収束する事はない。
 その場合は、その点で関数f(x)の連続の条件を満足しない。
これは、f(x)が連続である条件に反する。
 ゆえに、この仮説が成り立たず、
関数の最大値と最小値の差Δnは無限に小さくなっていく。

(一様連続性)
以上の様に、ある関数f(x)の各分割領域を更に2分の1に分割する操作をn回繰り返していき、各分割領域の関数f(x)の最大値と最小値の差(関数の値のばらつき)Δを求める。
(1)そのとき、全ての分割領域での関数の値のばらつきΔの最大値Δnが有限の値で存在すること。
(2)この操作を繰り返して分割領域を無限に小さくすると、
全ての分割領域での関数の値のばらつきの最大値Δnが、無限に小さくなって行く。
(すなわち、全ての分割領域での関数の値のばらつきがΔnより小さく、そのΔnが無限に小さくなっていく)
これが成り立つ関数f(x)の性質を「一様連続」であると言います。
 この説明は、以下の様に定義されている一様連続の言い換えです。
「どんなに小さな正の値εについても、全ての分割領域での関数の値のばらつきがε以下にできる、分割領域の小さな幅δ=(b-a)/(2^n)が存在するとき、その関数は一様連続である。」
(一様連続の説明おわり)

 無限に小さい差Δnによる、関数f(x)の値の総和(リーマン積分)への影響は無限に小さい。そのため、この関数f(x)はリーマン積分可能である。
(バラツキが一斉に小さくなる説明おわり)

【不正確な情報から真実を見抜くコツ】
 以下で説明するように、高校で教わる原始関数の定義は(大学での定義とは異なり)不正確なあいまいな定義です。
 そのように、不正確な情報から真実を拾い出すコツがあります。それは、扱う関数を均質な基本的な要素に分割して、その分割された関数に不正確かもしれない情報を適用します。
 具体的には、関数を、全て、1つながりに連続する関数に分割して考えます。その、1つながりに連続する関数を扱うのであれば、不正確な情報の公式を適用したとしても誤りに陥る事を防ぐことができます。

 そのように、先ずは、1つながりに連続する関数毎に積分を調べれば良いのです。
例えば、下図の関数f(x)を考える場合:
x<-1での1つながりに連続する関数と、
-1<x<1での1つながりに連続する関数と、
1<x での1つながりに連続する関数を、
別々の3つの関数と考えれば良いのです。

 そのように、関数全体を、均質な基本的な要素の関数に分割して、その基本要素だけに公式を適用すれば、不正確な壊れた道具の定理(例えば正しい原始関数の定義を使って証明した定理を作ってから、原始関数の定義を変えてしまって、その定理を適用するという使い方の定理)を使いこなすことができるようになります。
 不正確な情報が与えられても正しい答えを出せるようになる事は、数学の極意を習得するという事でもあり、大事な数学的分析態度だと考えます。

【原始関数とは何か】(ここをクリック)
-----【原始関数の正しい定義】---------------
 (原始関数の正しい定義は、1つながりに連続で、かつ、微分可能な関数F(x)をf(x)の原始関数と定義します) 

すなわち、関数F(x)が、連結区間a<x<bのどの点でも連続、かつ、微分可能な関数であれば、F(x)を微分して導関数f(x)が求められる。この場合に、F(x)を関数f(x)の原始関数と言う。
藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」)
 すなわち、原始関数は連結区間における連続関数であり1つながりのグラフであると定義されています。
-------原始関数の定義おわり-----------------

【不定積分とは何か】(ここをクリック)
(1)不定積分F(x)は、それを微分すると、有限個の微分不可能な点を除く大部分の点で、1つながりに連続した単位の被積分関数f(x)が得られる関数の事です。
(2)不定積分は、明確に1つながりに連続な関数です。
(3)不定積分は、原始関数と違って、微分したとき、被積分関数f(x)の数点の関数値と一致しないでも良い関数です。大部分のxでf(x)と一致するだけで良いのです。

【微分積分学の基本定理】
 関数y=f(x)が、 連結区間a≦x≦b の全ての点で連続とする。 その条件が成り立つならば、必ず、
という計算をすることができる。(積分可能である)
そして、次のことが成り立つ。

(1)S(x)は、連結区間a<x<bで、
S'(x)=f(x)
になり、(正しい定義の)原始関数の1つである。

このS(x)の式はf(x)の不定積分の定義になっています。

上の式で積分して計算される不定積分S(x)は、定義域が、積分可能な範囲に限定されている結果、定義域が連結区間に限定されています。
そして、S(x)は、必ず、その定義域で1つながりに連続した関数になります。

(注意1)
 以下の関数f(x)は関数の定義域内の全ての点で連続ですが、1つながりに連続な関数では無いので連続関数ではありません。
高校教科書の誤った連続関数の定義:「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である。」に従うと、これを連続関数とする誤りに陥ります。

この切れ切れのノコギリ状の関数f(x)を不定積分した関数F(x)を求めてみます。

ここで、関数値f(x)が定義されていないx=0.5の点等では、そのxの値の近傍までf(x)を積分して、その積分極限値をx=0.5の点等での積分値に拡張する積分をしました。

この関数F(x)を微分すると、x=0.5, 1.5, 2.5等では、F(x)の微分係数が計算できません。
この関数F(x)は原始関数ではありません。
そうなる原因は、被積分関数f(x)が1つながりに連続では無いので連続関数では無かったから、(微分積分学の基本定理)の前提条件である、関数y=f(x)が、連結区間a≦x≦bの全ての点で連続である条件が成り立っていなかったからです。
(注意2)
 また、連続点は数学の重要な概念であり、数学的に厳密に定義されています。不連続点という言葉は、その重要な連続点の定義に従属して、その反対の性質を持つ点として定義する必要があります。
しかし、「不連続点」の定義では、そうせず、たいした根拠も無く、上の例のように関数値が存在しない点は「不連続点」とは呼ばず、連続点の概念とは無関係な言葉として定義されています。
そのように定義した「不連続点」という概念によっては、xのある値x0でf(x0)が存在しないことで関数がx=x0で連続で無いという関数の不連続性が把握できなくなっています。
数学センスがある学生は、関数の連続点の否定を表すのではない「不連続点」という言葉は数学的に無意味で数学研究に役立たないと見抜き、「不連続点」という言葉は使わず別の言葉「連続で無い点」を自分で独自に定義して自分の研究に役立てると思います。

(注意3)
 高校生は教科書から、誤った連続関数の定義:
「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である。」
を教わることで、
正しい定理:「連続関数を積分した式は、その式のグラフの全ての点で微分可能である(微分積分学の基本定理)」が、

その誤った連続関数の定義から導かれるこの反例によって否定されてしまうという問題に直面します。
高校生は、この反例により、「(連続関数に限定すれば)微分積分が逆演算になる」という微分積分学の基本定理も否定され、積分微分の逆演算になる根拠も分からなくなるという深刻な問題に直面します。
こういう問題に直面する高校生に心から同情します。
(注意1~3おわり)

 微分積分学の基本定理によって、関数f(x)が連結区間のa≦x≦b上で1つながりに連続であるならば、
不定積分関数S(x)やF(x)が、f(x)のその範囲内の積分で計算する事で求められる事が保証されています。
 そうして計算して得た不定積分F(x)を使って、
被積分関数f(x)が連続である範囲のa≦x≦bでの定積分を、
F(b)-F(a)で計算できる事が保証されています。

 微分積分学の基本定理の登場により我々に注意が喚起されたメッセージは、
『関数f(x)の積分を計算しようとする場合には、その積分区間における関数の性質(連続である等)を調べなければならない』
というメッセージです。
不定積分を用いて定積分を計算する演算の際に、その定積分積分区間における関数の性質を調べる事を欠かしてはならない、というメッセージです。

 この大切なメッセージについては、日本の高校の積分の授業では、「積分する区間内の全ての変数値に対して関数値が定義されていなければならない」と教えられているようです。先ず、関数値が定義されている事は必要です。しかし、厳密に言うと、それだけでは積分可能の条件としては不十分です。

積分可能な例1)
 関数を積分する区間は、
a≦x≦b
というように、その積分区間の両端が存在する区間積分します。
すなわち、
a<x<b
というような、両端が存在しない区間では積分しません。
 例えば、以下の図の、x=0で連続で無い関数f(x)は、その連続で無い点以外の変数xの連結区間内で1つながりに連続です。その連結区間内で、この関数f(x)が連続関数であると定義されます。
積分が可能な範囲)
上図の関数では、
x=0の近くの、0<x≦bの範囲内のx=δの点から積分し、例えば、
δ≦x≦b
の範囲で積分します。

(注意)連続関数とは、ある関数f(x)の変数xの所定の範囲内で関数f(x)が連続である、という関数f(x)の範囲のことです。

積分できない例)
 上図の関数の事例では、x=0の点では関数f(x)の値が-∞になり、関数が定義されていないで、関数が不連続です。そして、この関数では、x=0を含んだ範囲で積分することはできません。
上図の関数を、上図の様にx=0を含む区間で定積分したら、マイナスの無限大になるので、積分が不可能です。
そのため、上図の関数を、例えば-1から1までの区間積分する事も不可能です。

これを無視して、関数f(x)の連続で無い点を定積分の範囲内に入れてしまうと以下の間違いをおかします。
F(x)=1/xをxで微分したら

になるので、
関数
の、複合区間を定義域にする誤った原始関数がF(x)=1/xです。そして、変数xの積分区間に、f(x)が不連続になるx=0を含めた、xが-1から1までの区間で、
関数f(x)の定積分を、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使って、  F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
という 計算で求めると、明らかに間違えます。

上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分はf(x)のグラフの面積にならなければなりません。そのため、定積分の答えは、マイナス無限大にならなければなりません。
しかし、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使った上の計算結果はそれと全く違い、面積が正の値の2になり、
全く間違った答えになりました。
高校で習う、
「原始関数F(x)を使って、以下の計算で定積分する。」
に従って、
(高校で教えられていない必須作業の、関数f(x)が定積分区間で連続か否かのチェックをしないで)
複合区間を定義域にする誤った原始関数F(x)の差を計算すると、上の計算の例の様に、
元の関数のグラフの面積が計算できず、
間違った答えになります。 

 なお、微分積分学の基本定理に記載されている、
という式で定義された関数S(x)は不定積分であって、1つながりのグラフになります。
実際、被積分関数

に対して、上の式により:
a>0の場合には、x>0の範囲の定義域だけの関数
S(x)=1/x, (x>0)

だけが得られます。この定義域で1/xは1つながりの連続関数です。
a≦b<0の場合には、x<0の範囲の定義域だけの関数
S(x)=1/x, (x<0)
だけが得られます。この定義域で1/xは1つながりの連続関数です。

a=0の場合には、S(x)が計算できません。
この積分の式で定義される(定義可能な)不定積分

は必ず1つながりに連続な関数です。
そのため、この不定積分S(x)は、x≠0における高校数学による誤った原始関数の定義:
F(x)=1/x, (x≠0)
(これは、定義域がx≠0で、x<0の部分とx>0の部分の複合区間を定義域にする、不連続な、誤った原始関数F(x) )
とは異なります。


積分可能条件の注意)
 高校生が覚えておくべき積分可能条件は、
関数f(x)が1つながりに連続な範囲内で積分するならば積分可能性が完全に保証され、
そうでないときは間違った答えが得られる事がある事 
を覚えておいてください。

 なお、微分積分学の基本定理積分可能性を完全に保証する条件であるf(x)が積分区間で連続でなければならないという条件は、緩める事ができ、f(x)の不定積分F(x)が1つながりに連続であるだけで良いということが分かっています。(これについては後で詳しく説明します)

(1つながりに連続した関数を単位として定積分を計算するならば、間違いは起きません。) 

 いずれにしろ、原始関数を用いて定積分を計算する演算の際に、その定積分積分区間における関数の性質(原始関数F(x)の連続性、又は、被積分関数f(x)の連続性)を調べる事を欠かしてはなりません。原始関数F(x)の連続性を調べるという事は、その関数F(x)が不定積分であるか否かを調べているのです。

(必ずある間違い)
以下の関数の不定積分があります。
この被積分関数が1つながりに連続な範囲は、
x>0 か、
x<0 か
の2つの範囲です。
単に(1/x)と表した被積分関数は2つの連続関数をいっしょくたにしてしまっています。
各連続関数毎に、別々に不定積分して関数の解を得なければなりません。
不定積分の解は、それぞれの連続関数に応じて2つあり、上記の式のように2つの式で表さなければなりません。
 しかし、高校数学では、その2つの不定積分を以下の式で1つの式で表して教えています。
 これは、2つの別々の連続関数をいっしょくたにした関数なので、もはや1つながりに連続な関数では無く、不定積分ではありません。
不定積分は1つながりに連続でなければなりません。
明らかな間違いですが、これが「不定積分を求めよ」という問題の解として教えられているので要注意です。

(大学生の正しい解答)
表現の煩雑さを避けて、
(解答おわり)

この式の右辺は不定積分では無いので、その式をF(x)と表して、それを定積分に適用して、
-1から1までの定積分として、
F(1)-F(-1)
を計算するのは間違いです。
(高校生は、上記の間違った不定積分を教わり、それを、上記の、不定積分と定積分の関係式に代入して間違った答えを得ます。高校生は(先生にも)、どこが間違っているか分からず、微分積分が分からなくなる高校生が多いのではないかと思います。) 

積分結果が1つながりに連続している正しい不定積分のグラフが連続するxの範囲のみ、が定積分が可能な範囲です。

(関数が1つながりに連続な範囲で積分可能な例) 
以下の図の、1つながりに連続な関数f(x)を考えます。

この関数f(x)の不定積分として以下の関数F(x)が考えられます。

この不定積分F(x)の求め方は:
x>0での関数f(x)の原始関数を求め、
x<0での原始関数を求め、
2つの原始関数を、独立にY方向に移動させて連続するようにつなぐ事で
総体の、上の図の不定積分F(x)が求められます。
 この不定積分F(x)をxで微分すれば、xがどの値であってもf(x)になるので、この関数F(x)は関数f(x)の原始関数でもあります。この関数f(x)が1つながりに連続な範囲のx=aからbまでの定積分は、
不定積分F(x)を使って、
F(b)-F(a)
で計算できます。

(研究課題)
ここで、
関数f(x)が、
の場合に、
その変数xの
x=−∞の点とx=∞の点が1点であって、
その点で変数xの区間が連結しているものと定義する。
そして、x→0の点は、変数xの連結区間の端点とした、
変数xの連結区間を定義する。

そして、関数f(x)は、
x→ ±∞の点で値f(x)=0であるので、その点でも連続していると定義し、
x→ ±∞の点を含む連結区間で1つながりに連続した関数であると定義できます。

(その様に、2つの関数をx→ ±∞の点で連結して1つの関数にすることは、置換積分法などで関数の変数を変換する場合に、自然に起こり得る事です。)

この関数f(x)の、
a<0と、
b>0との
2点の間の定積分を、
不定積分F(x)を使って、
F(b)-F(a)
という値であらわすと、
その定積分は以下の様に定義できます。

先ず、
x=aの点から、x=−∞まで
f(x)を定積分して、
続けて、
x=−∞の点から、x=bの点まで、
f(x)を定積分する。

すなわち、そのように、変数xのx=aからx=bまで連結した区間の経路で関数& f(x)が積分でき、
その経路の積分範囲で定積分した値が、
F(b)-F(a)
であると定義できます。

すなわち、
x=0をまたいで積分したりせずに、
x→ ±∞の点を経由した
迂回した経路で積分した積分結果が、
F(b)-F(a)
であると解釈します。

そう解釈するならば、
F(b)-F(a)は、
積分の値を正しくあらわしています。

 このように、関数f(x)の定積分を、連結区間内からはみ出す部分がない経路で積分した値であると認識すれば、
F(b)-F(a)は、
その定積分の値を正しくあらわす式であると解釈できます。
 定積分を計算する演算の際に、その定積分が可能な積分区間が、被積分関数f(x)の値が有限値であるxの点を連結した区間に限られると認識するのが良いと分かりました。
(なお、その連結区間で、不定積分F(x)は1つながりに連続な関数になっています。) 
(研究課題おわり)

積分が完全に保証される積分可能条件の外で行う例)
 微分積分学の基本定理における積分可能条件(関数f(x)が積分範囲内で1つながりに連続な関数でなければならない)にあえて違反して行う以下の積分では、被積分関数f(x)がある点で連続な連続関数である場合と、その関数の1点の関数値が存在しない(あるいは0等の値になる、その点では不連続な関数である)場合とが区別されずに、その範囲を積分した不定積分が同じ1つながりに連続な関数になる。

積分可能な例2)
以下の図の関数f(x)のグラフを考えます。

この関数は、x=0の点での極限とx=2の点での極限が存在しません。
x=0の点とx=2の点で関数は不連続であり、また、極限も存在しませんが、
-1≦x≦3
の閉区間をリーマン積分により小区間に細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、その連続で無い点を範囲内に持つ区間で(1つながりに連続な連続関数ならば必ず積分できるという積分保証範囲の外で無理やりに)あえて積分すると積分可能です。
この関数f(x)を積分して、以下の図の不定積分の関数F(x)を求めることができます。

(原始関数を利用した不定積分の求め方)
 この不定積分F(x)の求め方は、上図の関数f(x)の:
-1<x<0の区間のf(x)に対する原始関数 F(x)=0と、
0<x<2の区間のf(x)に対する原始関数 F(x)=xと、
2<x<3の区間のf(x)に対する原始関数 F(x)=C2とを求め、
それらの原始関数をY方向に平行移動して連続につなげば、以下の1つながりのグラフの不定積分F(x)が出来上がります。

この不定積分F(x)を微分して下図のグラフの関数を求めます。
x=0とx=2の点ではグラフが折れ曲がっているので微分できません。

この不定積分F(x)を微分した結果の導関数(dF(x)/dx)は、x=0とx=2で関数値が存在しないという点で、関数f(x)と異なる関数になるという特徴があります。

 原始関数の定義の発想の順番は、F(x)を先に考え、次にf(x)を考えるのです。
(先ず、連結区間を定め、その連結区間内で1つながりに連続した原始関数F(x)を考え、次に、それを微分して関数f(x)が得られ、結果として得られたf(x)の原始関数がF(x)であると呼ぶのです。)

 この発想の順を逆にしてf(x)に不定積分の関数F(x)を対応付ける写像変換を定義する事はできます。
 上の図で得た導関数(dF(x)/dx)は、x≠0とx≠2の範囲でのみ定義されている関数です。そのグラフはf(x)とは、変数x=0とx=2の点だけが異なります。

 この導関数(dF(x)/dx)のグラフを再度積分したらどうなるでしょうか。
その積分結果は、再び同じ不定積分F(x)が得られます。
 (ただし、関数値f(x)が定義されていないx=0と2の点では、そのxの値の近傍までf(x)を積分して、その積分極限値をx=0の点等での積分値に拡張する積分をしました。)

変数x=0での点とX=2での点の有無で異なる2つのグラフ、すなわちf(x)と、導関数(dF(x)/dx)を積分したら、同じ不定積分F(x)が得られました。
そのため、被積分関数f(x)に積分結果の不定積分F(x)を対応させる写像変換は、
2個以上の関数の、f(x)と(dF(x)/dx)とに1つの不定積分F(x)を対応させる、
複数対1の写像であると考えられます。

(注意)
 ちなみに、微分不可能な点がある関数F(x)は真の原始関数ではありません。(真の原始関数は必ず1つながりに連続で、すべての点で微分可能な関数です。また、所定の定義域の関数f(x)では原始関数が無くても、定義域を狭くした範囲では原始関数がある事も忘れないよう注意してください。)
 上の例の不定積分F(x)、

すなわち、x=0の点とx=2の点で折れ曲がって微分不可能な点を持つ関数F(x)は、
関数f(x)からx=0の点とx=2の点を除外した関数が微分の結果で得られる不定積分です。
この不定積分では原始関数より広い範囲の関数が扱え、上図のようなグラフの面積を求めることもでき実用的です。

(厳密に考える1)
 ここで、厳密に考えると、
不定積分F(x)を微分すると、x≠0とx≠2の範囲でのみ関数値がある導関数(dF(x)/dx)が得られました。そのため、関数F(x)は、x≠0とx≠2の範囲でのみ定義されている導関数(dF(x)/dx)の不定積分でもあります。
一方、x=0で、f(0)=1であり、x=2で、f(2)=1である最初の関数f(x)は、不定積分F(x)の微分によっては、x=0での点とx=2での関数値が得られません。
しかし、f(x)を定積分するために利用する関数としては、この不定積分F(x)で十分です。

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の182ページにも、不連続な関数f(x)の広義積分不定積分F(x)が1つながりの連続関数で得られることが書いてあります。
 また、 F(x)を微分して不連続な関数f(x)が得られる原始関数F(x)もあり得るが、それは、原始関数F(x)が微小に振動している場合という限られた場合だけです。
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の126ページには、
上図の様に、普通の連続で無い点を持つ関数f(x)の不定積分F(x)につては、その連続で無い点のx=0やx=2の点では、そのxの値で微分できないと書いてあります。
すなわち、上図におけるx=0やx=2の点のように有限の値の高さに段差を持つ連続で無い点を持つ関数f(x)には、その連続で無い点で微分できる原始関数F(x)は存在しないと書いてあります。
 その様に原始関数が無くても不定積分が存在することが、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の182ページに書いてあります。
不定積分F(x)においては、その不定積分F(x)を微分した関数が、被積分関数のf(x)からx=0やx=2という有限個の点を除いた大部分の点で関数f(x)と一致するだけで良い事が書いてあります。

 そのように、原始関数の場合は細かい注意が必要でしたが、広義積分を含めた不定積分の場合は、堂々と、不連続な関数f(x)の多くが積分可能であり不定積分F(x)を持つので、細かい注意に神経を使う必要も無くなり、積分がやり易くなりました。


(厳密な考察2から4)
 下図の3つの被積分関数f(x)の不定積分F(x)は同じ関数になります。これを以下で考察します。

(厳密に考える2)上図の左上の場合
0≦x≦2の定義域でのみ定義され、その定義域内で常にf(x)=1となる関数f(x)を考えてみます。
この関数f(x)は閉区間で1つながりに連続な関数です。
この関数f(x)を積分して得た不定積分F(x)は、
0≦x≦2の閉区間の定義域で定義される、F(x)=x
という関数になります。
1つながりの連続関数であるF(x)は、その端点x=0とx=2では、片側微分係数微分係数が定義され、x=0とx=2との点ではF'(x)の値があります。例えば以下の式の様に:

不定積分F(x)はf(x)の定義域の端のx=0で片側微分可能です。
x=0でもx=2でも、f(x)=1である関数f(x)は、不定積分の関数F(x)の片側微分によって得られます。
そのため、この不定積分F(x)は、f(x)の全ての関数値をF’(x)の結果として与える原始関数です。

(厳密に考える3)上図の右上の場合
0≦x≦2の定義域でのみ定義され、その定義域内で、
x=0で   f(x)=0
0<x<2で f(x)=1
x=2で   f(x)=0
となる関数f(x)を考えてみます。
その関数f(x)を積分して得た不定積分F(x)は、
0≦x≦2の定義域で定義される、F(x)=x
という関数になります。
この不定積分で得た関数F(x)は、
f(0)=1となる関数f(x)の不定積分で得た関数と同じ関数になるので、f(0)=0という情報が失われた関数である事が明らかです。
このF(x)からは、f(0)の値=0が再現不可能である事が明らかです。
F(x)は、定義域の閉区間の端点で片側微分可能で、端点x=0とx=2での微分係数=1が計算できますが、その値は、f(0)及びf(2)とは異なります。
このように、不定積分F(x)の微分によっては、x=0での点とx=2でのf(x)の値は得られません。この不定積分F(x)は、不連続な関数f(x)の全ての関数値をF’(x)の結果として与える原始関数ではありません。
 このF(x)をこの例の不連続な関数f(x)の原始関数と呼ぶのは不正確ですが、このF(x)はf(x)の不定積分である事には間違いありません。

(厳密に考える4)上図の左の場合
0≦x≦2の定義域でのみ定義され、その定義域内で、
x=0で   f(x)=2
0<x<2で f(x)=1
x=2で   f(x)=2
となる関数f(x)を考えてみます。
その結果は、(厳密に考える3)と同じ結果になります。

積分可能性が保証される条件とは)
 上図の場合では、関数f(x)が不連続な点があっても積分できました。これは、以下の条件を満足したからです。
関数f(x)が積分可能な条件は、

関数f(x)の積分区間で、f(x)の不定積分F(x)が連続であることです。
関数f(x)を積分する区間は、不定積分F(x)が1つながりに連続な範囲の、例えば、
a≦x≦b
という区間積分が可能です。

(この様に不連続関数f(x)にも積分可能性が保証される条件については後で説明します。)

(不連続関数f(x)の無理やり積分と、その微分の例)
 関数f(x)を:
変数xが整数の点では関数値が存在せず、
変数xが整数以外の点では値が1、
である不連続関数とします。

(上図において、関数f(x)の連続で無い点である、変数x=整数での関数f(x)の極限値を、その変数xの位置での関数f(x)の値にして連続で無い点を除去すれば、関数f(x)=1となる連続関数になります。)
 この不連続関数 f(x)のグラフを積分したら、
1つながりに連続な不定積分 F(x)=xが得られます。

ここで、関数値f(x)が定義されていないx=0の点等では、そのxの値の近傍までf(x)を積分して、その積分極限値をx=0の点等での積分値に拡張する積分をしました。

この不定積分F(x)=xを微分したら、
連続関数であるf(x)=1が得られます。
この不定積分F(x)=xは、それを微分して得られた関数f(x)=1の原始関数です。

 上図のf(x)及びf(x)を積分した結果の不定積分F(x)では、被積分関数が連続関数f(x)である場合と、その連続関数のxが整数の点の関数値が存在しない(あるいは0等の値になる)不連続関数f(x)である場合と、が区別できません。
この様に、積分すると、被積分関数の連続で無い点の情報を失った不定積分F(x)が得られます。

積分可能な例3)
(注意)
 原始関数のF(x)が連続で微分可能でF'(x)=f(x)であっても、f(x)が連続関数になるとは限らないことに注意が必要です。F(x)が連続で微分可能であっても微小に振動している場合があるからです。
 以下で定義する原始関数F(x)を微分して得た関数f(x)は、
F(x)の微分で作られたので、積分可能です。
(F(x)の定義)
x≠0の場合:

x=0の場合: F(0)=0,

導関数f(x))
この原始関数F(x)はx≠0の場合も、x=0の場合も、微分可能で、
その導関数f(x)は、以下の式であらわせます。
x≠0の場合の微分

になり、xが0に近づくと-1と1の間を振動します。
この導関数が含むcos(1/x)の関数が以下のグラフであらわす形の関数になるからです。

X=0の場合にも、F(x)は微分可能で:

というように、0になります。
このように、x=0の場合の導関数f(x)は、x=0で不連続ではありますが、f(0)=0という値を持ちます。

この導関数f(x)は、x=0で不連続ですが、x=0で関数値を持ち、積分すると原始F(x)になる、積分可能な関数です。
しかも、その積分結果の原始関数F(x)を微分すると、元の、x=0で不連続な関数f(x)が得られます。

積分可能な例4)

上のグラフは、不連続な関数f(x)のグラフですが、無理やり積分して積分可能なグラフの例を示しています。

 上の図の関数f(x)がリーマン積分可能なのは、変数xの全区間の部分区間毎です。
第1の部分区間
-∞<x<A
第2の部分区間
A’<x≦C
(点Aで関数は不連続であり、また、極限も存在しませんが、
-∞<x≦C
まで合わせた区間でも、関数の区間を細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、その連続で無い点Aを範囲内に持つ区間でも積分可能です。)

(点Bでは、関数が無限大になるので積分ができません)
第3の部分:
D≦x<+∞

(注意1)
 リーマン積分では、点A’から点Dまで、関数f(x)の値が無限に大きくなる点Bを範囲内に持つ区間で関数f(x)を積分することができません。
その理由は:
無限に関数値が大きくなる点Bを積分の範囲内に持つと、その点Bを中に持つxの小区間で、
細分の幅Δxがどれだけ小さな値であっても、
(1/Δx)≪f(ξ)
となる関数値f(ξ)を選ぶことができるからです。

そういう関数値f(ξ)を選んでしまうと、関数値の総和が定まらなくなってしまうからです。

(注意2)広義積分
 しかし、上図の関数f(x)は、B点の左側の区間で、X=A’からx=Cまでの積分の値の、Cを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとします。
また、B点の右側の区間で、X=DからX=+∞までの積分の値の、Dを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとします。
「そのように左側の区間のC点及び右側の区間のD点をB点に近付けた極限での積分の値が存在するならば、
B点の左側の区間積分値と、B点の右側の区間積分値の和を、点Bを範囲内に持つxの区間での積分とする(広義積分)」
と言うように、関数f(x)の「積分可能性」の定義を拡大することができます。

また、グラフが積分可能な範囲は、変数を置き換える置換積分によって、変数を変え、被積分関数の形を変えると、
積分可能な範囲が変わることがあります。

例えば、
関数f(x)≡1/ -x
は、xが-1から0未満の数までの範囲で積分可能ですが、
xが-1から0までの範囲では、x=0に近づくと被積分関数の値が無限に大きくなるので積分可能ではありません。


しかし、
新たな変数t≡- -x
を使って、変数tで積分する式に変換する(置換積分)と、
以下の図の様に、被積分関数が定数2に変換されます。
そのため、その場合は、 xがー1から0までの範囲に対応する、
tが-1から0までの範囲で、「積分可能」に変わります。
そのように、積分可能な変数の範囲は、変数を変換すると変わることがあります。 

また、この関数f(x)に対して以下の図のグラフの不定積分F(x)を考えてみます。
不定積分の求め方)
 この不定積分の求め方は、上図の関数の部分毎に原始関数=不定積分F(x)を求め、それらの不定積分を、連続になるようにつなげば、以下のグラフのように、総体の不定積分が出来上がります。
定義域x<0の関数f(x)の原始関数の-2 -x と、
定義域x>0の関数f(x)の原始関数2
を独立にY方向に平行移動させて、x=0で連続につないで不定積分を求めます。
 この不定積分F(x)は、不定積分が、被積分関数F(x)の定義域のx<0だけで定義されることになるのが気持ち悪かったので、被積分関数f(x)のx>0の範囲を勝手に定義して、その全体の不定積分を作りました。関数f(x)の部分毎に作った原始関数を、連続につないで総体の不定積分を作りました。


このグラフの不定積分F(x)を微分してみます。

この不定積分F(x)は、1つながりの連続関数であって、
また、x=0以外の点で微分するとf(x)になります。
この不定積分F(x)が1つながりに連続な変数xの範囲では、関数f(x)が積分可能です。
(その理由は、以下で、藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」を解説して説明します)

そして、関数f(x)の定積分は、
不定積分F(x)が1つながりに連続な範囲の:
a≦x≦b
区間では定積分でき、その定積分の値は:
F(b)-F(a)
で計算しても良いです。
関数f(x)が積分可能な条件は、f(x)の不定積分F(x)が、f(x)の積分区間において1つながりに連続である事です。

このように、積分可能の条件が広くされました。


----(補足)------
また、-1≦x<0で定義された
関数f(x)≡1/ -x
の定積分を計算する場合に、上図の不定積分F(x)の他に以下の図の様に不定積分F(x)と、それを微分した関数f(x)を考えて、それらの定義域を、元の関数f(x)の定義域にまで縮小して考えても同じことになります。
 つまり、被積分関数f(x)のx>0の範囲に接続する勝手な関数を別の関数に変えて、その全体の不定積分を作りました。関数f(x)の全体の定義域の部分の定義域毎の原始関数を、連続になるようにつないで総体の不定積分を作りました。

この関数F(x)は、x=0で連続な1つながりな連続関数です。
この関数F(x)を微分すると以下の関数f(x)になる。

そのため、F(x)は、そのf(x)の不定積分です。
この不定積分F(x)の定義域を、
x≦0
にすれば良い。


 ここで、x<0で定義される被積分関数f(x)に、x>0で定義される勝手な被積分関数f(x)を加えて、被積分関数f(x)を、その定義域を広げた異なる関数に変えて、その全体の不定積分F(x)を作りました。そして、最終的に、その不定積分の定義域は削除するので、X>0の定義域の不定積分は、気休めに加えたものにすぎません。
 ただし、いずれの作り方で作るにしても、不定積分F(x)の定義域はx≦0にでき、被積分関数f(x)の定義域はx<0ですので、不定積分F(x)の定義域の方が被積分関数f(x)の定義域よりも広く作れました。 
----補足おわり--------

これらの事については、数学者の藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」が、
連結区間a≦x≦b内で定義される関数f(x)が、その連結区間内に有限個の連続で無い点を持つ関数f(x)である場合に、

その区間a≦x≦bでのf(x)の積分を広義積分と呼び、
関数f(x)の不定積分F(x)が求められて、
関数f(x)の積分範囲
a≦x≦b
内で不定積分F(x)が(端点では片側連続である)1つながりに連続な関数ならば、

(その積分範囲内にF(x)が微分不可能な点、それは被積分関数f(x)が連続で無い点、があっても良い)、
(1)それは、不連続関数f(x)が積分可能である証拠であり、
(2)以下の計算で定積分を計算して良い事が書いてあります。
F(b)-F(a)
よって、
不連続な関数f(x)に対して、

その定義域を、関数f(x)の連続で無い点を除外した連結区間に分割し、
それら各連結区間毎に原始関数を計算し、
得られた各原始関数を連続につないで不定積分を構成します。
その1つながりに連続な不定積分を使って上の式で定積分を計算して良いのです。

また、小寺平治・著「はじめての微分積分15講」(2,200円)の103ページにも、このことが書いてあります。

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の182ページにも、このことが書いてあります。

(複合区間を定義域にする誤った原始関数の差で計算するから間違えるのであって、不定積分(必ず一つながりな連続関数になる)の差で定積分を計算するならば、間違いは起きません。不定積分(いつも一つながりな連続関数)の差で定積分を求めたと書く答案が一番正しい答案だと思います。)

《(外部リンク)置換積分等の積分の計算に潜んでいる広義積分》

《(外部リンク)変な積分》


 微分積分学は、微分可能な関数と積分可能な関数(その関数の変数xの範囲の定義域)を定義して、その種の関数の間で微分したり積分をします。「微分可能」と「積分可能」という制限条件を定め、その制限条件を満足する関数を扱うのが微分積分学だと認識することがとても大切です。
 しかし、この一番大切な概念を高校2年には教えない。高校3年に至っても「積分可能」の概念を教えていないようです。
 しかも、1997年からは、日本の高校の数学IIで面積が無定義に用いられという、数学センスを否定する蛮行が行なわれた。そして、関数f(x)のグラフとx軸で囲まれる領域の面積を,x方向で微分するともとの関数f(x)になり、面積の微分がf(x)となるという本末転倒なことを教えるようになった。

 現在の高等学校の教科書は,積分の概念の説明を回避している。

数学者の吉田洋ーが以下のようになげいています。
“論証"・論証"とやかましくいっておきながら,微積のところへ来ると,とたんにいいかげんな議論でごまかしている。一ーまた高校ではごまかさざるを得ないだろう。高校数学の目的は生徒のあたまを混乱させることにあるのだろうか。


 このようなデタラメな教育では、高校生に微分積分が分からないのも無理無いと考えます。

注意 5.3 1969年の日本書院の高校の教科書の数学IIIで, 定積分は次のように定義されている.
関数 y = f(x) は閉区間 [a, b] で連続とする.

(関数が不連続な場合への積分の定義の拡大を排除していないので、定義にごまかしが無い)

この区間を図のように (n-1) 個の点
, x, … , xn-1
で n 個の小区間
[a,x], [x,x], … , [xn-1, b]
に分ける.それら小区間内にそれぞれ任意の点
, t, … , t …①
をとって,和


を作る.ただし、a=x0,b=xとする。
すべての小区間の長さが,いずれも 0 に近づくように n を限りなく大きくするとき, ①の点の位置のとり方にかかわらず, 和Sは一定の極限値に近づくことが知られている. この極限値を,関数 f(x) の区間 [a, b] における定積分といい


で表す. ■

 この定義は高校生のための定積分の定義として優れている. リーマン積分の理論と断絶していない。 

大学において、そこに開かれている. 「収束」の意味,区間和の上限,下限などを学習し,
連続関数なら、Sが収束することと、積分可能であること、
をつかんだら、
その段階で,高校での定義を再認識することができる.
高校教科書はこのようでなければならない.

《下図に各種の関数の集合の包含関係をまとめた》


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